【イケメン戦国】プレゼントを探せ!〜徳川家康誕生祭⑤〜
第9章 【真紅の水仙】〜誕生祭⑤〜中編
戌の刻___
宴の終わりも近づき、政宗の趣向を凝らした料理がそれぞれの胃袋に収まりはじめ、美酒が振る舞われ、広間の中は武将たち数人とはいえ、明るく賑やかだった。
しかし夜の闇が深まるにつれて、家康に酌をしては、時折、頬を紅潮させそわそわするひまり。
すると……
「ひまり。酌をしろ」
「は、はい!今、行きます。……ちょっと席外すね」
信長に呼ばれ、家康に一言声をかけると、着物の裾をスッと膝から滑らせ立ち上がり、上座に移動する。
側によると右手が伸び、
「……貴様。酒の力を借りなくても良いのか?」
「そ、それはっ///……贈り物をちゃんと渡したいので」
コトコトと徳利を傾け、薄くて平らな形状の蒔絵が施された朱塗りの盃になみなみと注ぐ。
勿論、ひまりが言っている贈り物は、この日の為に心を込めて手作りし、用意していた贈り物。家康にそれを渡す時に伝えたい言葉があり、酔っていては上手く伝えれないかもしれないからと、可愛らしい不安を零せば……
信長は、クッと一気に酒を飲み干し、ひまりから徳利を奪うと、まだ使用していない盃になみなみと注ぎ、それを突き出す。
「くっ。恥じらいが邪魔して言えぬかもしれんぞ」
「なら、こんなっ///」
「つべこべ言わず、少しは入れておけ。………体が温まる」
「…………信長さま」
最後の部分はサラリと流すように告げられたが、ひまりの胸にはじわりと広がり、最後にはゆっくり溶け落ちた。
暫く、他愛のない話をしている間に、羞恥心からではなく、酒の力によりほんのりと桃色にひまりの頬が色づく。
そろそろお開きにするかと、
信長が盃を持っていた手を下ろした時。
「一つだけ最後に。お願いしても良いですか?」
ひまりはある事を頼んだ。
そして宴の締めくくりに相応しい……
ガシッ!!
「ちょっ!皆んなして、何なのっ!?」
逃がすまいと家康を、
政宗と秀吉が腕をがっしりと掴む。
「有り難く思え。光栄なことじゃないか」
「一生忘れねえぞ、これは」
「ほら、家康。さっきのように大口を開けろ」
「あーん。……実に羨ましいです」
酒気を帯びていた整った顔立ち。
それが、引き攣り一気に青ざめる。