【イケメン戦国】プレゼントを探せ!〜徳川家康誕生祭⑤〜
第9章 【真紅の水仙】〜誕生祭⑤〜中編
宴の最後は……
「俺がわざわざ『でこれーしょん』してやったんだ。不満なんぞないはず、だ」
ニヤリと笑う信長による……
『ラストバイト』
幼き頃から人質として暮らし、辛い幼少時代を過ごした家康への……
両親に変わっての愛情。
「って!何で!顔に……」
「貴様がしっかり口を開けぬからだろう」
「ふふっ!良かったね」
「良い男になったじゃないか」
「くくくっ……」
大スプーンを片手に持った信長。
容赦無く身動きの取れない家康の口にたっぷりとケーキを押し込めば、武将たちの笑い声が広間に暫く響き……
「さて、片付けるか」
「あ!私も少し手伝うよ!」
「お前は良い。女中を呼べば済む。にしても、少し足がフラついてるじゃねえか。……早くゆっくりしてこい。……誰かさんとな?」
「えっ///」
含んだような政宗の言い方に、パッと両手を頬に添えると、何か揶揄われる前に赤いのはお酒の所為だからねと、ひまりは先に答えた。
「今宵は私がお手伝いしますので」
その申し出は、仕事が増えるような予感しかせず、政宗はうんざりとした表情を浮かべたが今夜の所は三成に頼み……
宴はお開きとなった。
「荷物は後で届けてやる。まず、その汚れた顔を湯浴みで落としてこい。……今夜は泊めてやる」
差し出された一枚の文。
「……はぁ。いくら信長さまに進められたとはいえ……」
「迷惑かけてごめんなさい……」
「別に怒ってるわけじゃない。……後で部屋に行くから。気分悪くなったら、言いなよ」
「う、うん///」
(何か様子……変だし……)
腰元に触れ支えようとすれば、バッと凄い勢いで離れられ、背中を支えようとすれば、フラフラしながら早歩きするひまり。
仕方なく手だけしっかりと繋げば「ありがとう」と、か細い声が一歩後ろから聞こえ、キュッと触れ合った部分に力が入った。
(……無自覚)
べたべた甘えるわけでもなく、ほんのりしたひまりの甘え方に弱い家康。今すぐにでも、抱き締めたくなったが、それを抑え千鳥足のひまりを部屋まで送り届ける。
そして、木箱と信長に渡された文だけ預け……
「待ってるね///」
ケーキでベタついた顔の上を手の甲で拭い、そそくさと湯浴みに向かった。