【イケメン戦国】プレゼントを探せ!〜徳川家康誕生祭⑤〜
第9章 【真紅の水仙】〜誕生祭⑤〜中編
その事をひまりは、
あえて今は秘密にした。
いつかそんな家庭を築き上げたい。
家康となら出来るのではないかと。
今の願いと想いを胸に大切にしまい。
その代わりにこの約二日間。
二人で過ごした思い出を……
一気に胸の中に溢れかえした。
「いっぱい詰まってるね」
ひまりに、生クリームを取って貰った家康。頬を桃色に染め、暫くポカーンと口を開けていたが……自分に向かって微笑む姿と、じんわりと心まで温められるような声に、口元が自然とほころぶ。
「……そうかもね」
ふわふわ猫っ毛を揺らし、
表情を柔らげ、頬に喜びを浮かべた。
そんな様子を、
屋根裏から見守っていたのは……
(実に素晴らしい。ファーストバイトだったよ。銀細工職人もきっと喜ぶ)
少しでも時が繋げたらと想い、ものづくりの京都を感じさせるスプーンを選んでいた佐助。
珍しく鉄仮面の無表情を一瞬だけ変え、眼鏡をグッと中指で押し当てると暗闇に姿を消した。
(それにしても……これが…)
家康は小さいほうの銀スプーンをくるりと回して、観察するようにじっくりと見ていると……
「何、真剣な顔してるんだ」
「誕生日ぐらい愛想振り撒けよ」
「ちょっと考え事をしていただけです。……これは?」
「くくっ…『ぷれぜんと』だ」
「ありがとうございます」
武将たちが贈り物を持って、
次々に現れる中……ここぞとばかりに、満面の笑顔でやってきた三成。
「家康様。これは私からです。実は、中身なのですが!」
「言わなくて良い。後から見る……」
「もう!ちゃんとお礼言わないとダメだよ?」
相変わらず三成には素っ気ない態度の家康。ひまりが横から嗜めれば、照れ臭そうに「どうも」とボソッと呟く。すると、三成はたちまち瞳を潤ませ……
「私は今日という日を一生忘れません」
ひまりは相槌を打ち、その大袈裟にも思えるようなリアクションにクスクス笑う。
そして……武将たちが席に戻ると、家康の方に体を向け……
「あ、のね。私からの贈り物……部屋で渡したいから///宴が終わってからでも来てくれる?///」
しっとりとまだ濡れた髪。それを耳にかけ、俯きかげんにそう告げたひまり。家康は跳ねる胸を押さえながら、静かに頷いた。