【イケメン戦国】プレゼントを探せ!〜徳川家康誕生祭⑤〜
第9章 【真紅の水仙】〜誕生祭⑤〜中編
廊下を突き進み___
城内でも吐く息がはっきりと見えるほど、厳しい寒さ。家康はある異変に気付いて、大広間の前で足を止める。
(灯りが……)
着物の袂から手を出し、右手に佐助から貰った贈り物をしっかりと握りしめ、左手で襖に手を掛け……
スッと開く。
薄暗い室内。
(……誰もいない?)
場所を間違えたのかと疑うほど、
静まり返った空気。
中に踏み入ると、奥にある蝋燭の黄色い焔だけが、一つだけぼんやりと暗闇に浮かび……
「……宴の幕開けだ」
そこから聞こえた声。
暇を持て余していた信長。白い羽織を両肩にかけ、満足そうに顔をほころばせた瞬間。
家康は何かに弾かれたように、
バッと振り返れば……
それが、合図だったかのように……
「「「「「誕生日おめでとう」」」」」
祝いの言葉が一斉に上がった。
予想外の出来事に、驚きのあまり声が出ない家康。ひまりが予想したように目を瞬かせ、暫く呆然と立ち尽くす。
すると、
胸の前に差し出されたのは……
「ふふっ。これがケーキだよ!」
「これが……?」
暗闇の中に煌めくケーキと、
ひまりの笑顔。
柔らかなロウソクの灯りが照らす、白い雪のような生クリームと真っ赤な苺。鮮やかな色彩を放つ。そして、それを持って自分を見上げるひまりの表情は、思わずため息が出るほど美しかった。
もう一つ、驚いたのは……
チョコプレートに添えられたメッセージ。その可愛らしい書体で書かれた文字を見て、家康は更に目を見開く。
「今日は特別な日だからな」
「私達もひまり様と同じ気持ちです」
政宗と三成の言葉に家康が息を詰まらせ顔を横に逸らすと、秀吉と光秀は両側に立ち肩に手を置く。
「はい!ふっーって…して?」
「え?……ふっー?」
「願い事をしながら、この灯りを息で吹き消すとね。叶うって言われてるの」
それを聞いた家康は、ロウソクの灯りに魅入られるように視線を移し、少し間を置いた後、ある事をボソッと呟いた。
「せーのっ」
ひまりの合図で、
ぽっと小さな複数の灯りが揺れ……