【イケメン戦国】プレゼントを探せ!〜徳川家康誕生祭⑤〜
第9章 【真紅の水仙】〜誕生祭⑤〜中編
コンッ。
襖越しに聞こえた合図。
「……来たみたいだな」
「間違っても三成に持たすな。すっ転ぶのがオチだ」
「そ、そんなっ!家康様の為なら、この身を投げ打ってでも『けーき』を守り抜きます」
「それが余計に危ねえ」
揺らめく温かい光。
(びっくりするかな?)
現代ではありがちなサプライズ。
家康の綺麗な翡翠色の目。
それが何度も瞬きを繰り返すのを頭に浮かべ、くすりと笑い、ひまりはしっかりと膳を両手で持つ。
「ひまり様。まだその前掛けをなさっているのですか?」
「う、うん///まだお手伝いすること、あるかもしれないからっ」
不思議そうに尋ねる三成にぽっと頬を染め、まだ水気が少し残った髪を揺らす。
「くくくっ……」
((何かあるな))
そそくさと白いエプロンの裾をひらつかせ、何処かぎこちない歩き方で出て行く後ろ姿。それを目で追いながら、秀吉と政宗は静かに顔を見合わせた。
しっーと、人差し指を立てる秀吉。
足音一つ立てずに近づく光秀。
三成の肩を叩き目配せする政宗。
ドキドキする胸を落ち着かせ、
慎重にケーキを運ぶひまり。
この場にいない信長も、この瞬間を今か今かと心待ちにしていたに違いない。
そして、もう一人。
(大事な場面だけは、見届けさせて貰うよ)
屋根裏から覗く佐助の姿。
開いたまま襖に……
「……宴の幕開けだ」
細長いロウソクに灯った火。
お月さまを表現したような、
優しい光が華やかな羽織を照らした。