【イケメン戦国】プレゼントを探せ!〜徳川家康誕生祭⑤〜
第9章 【真紅の水仙】〜誕生祭⑤〜中編
湯浴みを終えた後___
暫くしてから、ひまりは大広間の隣の部屋にいた。そして、箱からそっとある物を取り出すと大きく胸を膨らませ、ふーっと長い息を吐く。
「良かった〜。型崩れしてなくて」
湯浴み後、髪を簡単に乾かしてから、ケーキの形が崩れたりしていないか、宴前に確認しに来ていたのだ。
短い距離とはいえ、ケーキボックスを風呂敷に包んでマンションから本能寺に走り、ワームホールで移動。大事に抱えていたとは言っても、不安があった。ケーキの下に敷いてある台と、ズレないように留め金(三つ目金具)がついていたお陰か、大粒の苺が少し傾いている程度。
「これが『けーき』か。見るからに甘ったるそうな感じだな」
「何だか可愛らしい食べ物ですね」
「これをお館様が手伝ったのか。……想像出来ないな」
「最後に苺を乗せたのは自分だと。仰っていたぞ」
政宗と三成はそれぞれケーキの第一印象を述べる横で、秀吉は光秀から信長がエプロンという前掛けを着用して、ケーキのデコレーションを自らの手で行ったことを聞き、心底驚いていた。
ひまりはその時の真剣な表情を思い出して、口元を綻ばせるとケーキを蝶足膳の上に乗せる。
(喜んで貰えたら嬉しいな)
皆んなの想いと、思い出がたくさん詰まったケーキ。まだ味はわからないが、それだけで格別に美味しいはずだとひまりは思い、微笑む。
そしてある一点を見つめる。
真ん中に乗った角の丸まった、
四角いチョコプレート。
そこにはチョコペンで、一番伝えたいことが言葉が綴られていた。
「家康のヤツ泣くかもしれないな」
秀吉はキュッと目尻を下げ。
「口を尖らせて、ボヤく姿も浮かぶ」
光秀は意地悪そうな笑みを浮かべ、喉を転がす。
「照れ臭くて、何も言えなくなったりしてな?」
政宗はニカッと歯を見せて笑い。
「どんな反応なされても、家康様の心にはきっと届きますよ」
三成はエンジェルスマイルを浮かべる。
ひまりは嬉しそうに頷き。
ーー……一言に込めたようだな。
仕上げの時。
信長が隣で呟いた言葉が蘇った。