【イケメン戦国】プレゼントを探せ!〜徳川家康誕生祭⑤〜
第8章 【真紅の水仙】〜誕生祭⑤〜前編
天守に降り注ぐ月明かり。
「失礼しました!///」
白いエプロン姿の背中を追うように照らし……ぴしゃり!と、派手な音を立てて襖が閉まると、今度は信長の足元だけを照らした。
さっきまでぬくもりがあった手を握りしめ、立ち上がり、元の位置に戻り脇息に片肘を預け寄りかかると……
襖越しに声が聞こえ、静かに開く。
「くくくっ。顔から火を出して、走り去りました」
「少しばか、揶揄ってやったからな」
風呂敷包みを抱き顔を俯かせ、無我夢中で廊下を走っていた所為で、ひまりは光秀とすれ違っても全く気づかなかったのだ。
「あれで、少しは腹を括るだろう。後は酒の力でも借りれば良い。先に、湯浴みを進めておいたからな」
「千鳥足で湯船は、危険。信長さまの配慮ですね」
信長はフッと鼻から息を吐き、懐から取り出したのは……小包装された金平糖。
(……手がかかる奴らだ)
その赤い粒を袋の上から指の腹で転がして、満足げに月を見上げた。
場所は天守から変わり___
むくむくと湯煙が立ち込めた浴室。
肌白い手がゆっくりと湯を救い、肩に浴びせると、ちゃぷんと音を立て肩が完全に沈む。
「ひまり様?あまり長湯はなさらないで下さいね」
「大切な宴前に逆上せてしまっては、大変です!」
壁の向こうで待機した待女二人が、湯浴みをしているひまりに声をかける。信長に今夜は少々、酒を嗜むように言われ、先に湯浴みを済ませておくことになった。
それは、
信長なりの配慮だったのだが……
(……うぅ///もう逆上せそうかも///)
今のひまりは、
もはやそれどころではない。
待女たちに、
短い返事だけはしたが……
「それにしても、不思議な絵図ですね?」
「でも肌触り良くて、凄い上質な生地ですよ」
聞こえた話し声に耐えきれず思わず両耳を塞ぎ、そして湯浴みが済んだ後に大騒ぎする自分を想像して……
今度は顔半分を湯船につけ……
ぶくぶくぶくぶくっ……
(もうーっ!佐助くーん!///)
ひまりは、心の声で盛大に叫び声を上げた。それは昨日、現代で苺狩りツアーを学割で申し込んでいた事を知った時以上の……叫び声だったに違いない。