【イケメン戦国】プレゼントを探せ!〜徳川家康誕生祭⑤〜
第8章 【真紅の水仙】〜誕生祭⑤〜前編
どうして、信長さまの所に?
(危険な物だといけないからとか?でも、佐助くん、確か天鵞絨の……。興味があるのかな?)
新年早々の三日。この、家康の誕生を計画する為に開かれた秘密会議。その時に、信長に佐助がこっそり何かを告げていた事は、薄っすら記憶の片隅にあった。
うーん。と、
あれこれ考えている間に部屋に着く。
水仙を花瓶に入れ、文机に置き、着替時に発見していた鏡台にちょこんと乗せられた風呂敷包みを抱え……
急いで、天守へと向かったが……
「あ、あ、あのっ…こ、これ…っ」
「何か問題があるのか?」
手から滑り落ちた真紅のビロード。
信長に渡された一枚の絵図。ひまりは、まるで酸素不足の金魚のように口をパクパク動かして、固まった。脇息に凭れていた信長は、予想どおりの反応に満足げにニヤリと笑う。
「む、無理です!こ、こんなっこんなっ///」
「来世では、良く使う手だと聞いたが」
『来世』もうそのフレーズからして、吹き込んだのは間違いなく佐助だろう。
「よ、良くなんてっ///何かの雑誌でチラッと///で、でもでもっそのっ///と、とにかくっまた、謙信様にはお礼の文は書いておきますのでっ!」
ひまりは声をひっくり返して、
完全にパニック状態。
湯気が今にも顔から出そうな程、耳元まで朱色に染め、まるで見てはいけない物を見たように、パッパッと素早く元に戻すと、最後にキュッときつく風呂敷を結んだ。
すると、フッと目の前に影が落ち……
「ほぉ……。貴様、家康を喜ばせたくないのか」
ーー貴様は、家康を喜ばせることだけを考えろ。
あの秘密会議の最後に言われた台詞。それが今度は疑問文に変わり、ひまりは目を泳がせ「それとこれとはっ……」「それに家康が喜ぶとはっ…」思い付く限りの言葉を並べ、取り乱したように困り顔を浮かべれば……
大きな掌が左頬を包む。
「ならば俺で……。試してみるか?」
……男がどの様に喜ぶか。