【イケメン戦国】プレゼントを探せ!〜徳川家康誕生祭⑤〜
第8章 【真紅の水仙】〜誕生祭⑤〜前編
ようやく目が回るような慌ただしさから解放され、落ちついた大広間。
「秀吉さん、三成くんいる?」
「……良い所に来たな」
「今、ちょうど準備が整った所です」
ひまりが襖を開くと、それに気づいた秀吉と三成は視線を動かして声をかける。入り口付近に立っていた二人は、飾り付けの準備がある程度、整ったことを告げ他に必要なものは無いかと尋ねた。
ひまりは「ばっちりです」と笑い、運んできた盆の端に水仙を乗せ邪魔にならない場所に置くと、二人の近くまで移動。
「ありがとうございます!わぁ!綺麗!」
「飾りつけって言っても、軽く掃除して花を生けるくらいしか出来ないからな」
広間の左角端に置かれた花器。
そこに生けられた、季節の花を見てひまりは顔の前で手を合わせ、歓喜の声を上げる。秀吉は優しい表情でポンと頭に手を乗せると、三成に声をかけた。
「こちらを少し前に、針子仲間様からお預かりしました」
差し出された、
綺麗な花模様の菓子折り箱。
「針子仲間?あ!もしかして!…………やっぱり……皆んな、作ってくれたんだ。明日、ちゃんとお礼を伝えないと」
「それは、一体?」
「うん!輪飾りって言ってね。細く縦長に切った生地をいくつか作って、輪にして縫い合わせて、それを沢山繋ぎ合わせた飾りつけだよ!」
指で挟み箱から少し持ち上げ、二人に見せた。現代では、馴染みのある飾り付け。本来は、折り紙という彩りのある紙で作る物だと、ひまりは明るい声で説明。
「家康の贈り物を針子部屋で作っていた時にね。余った生地でこれを作っていて……」
数日前の話。
ハギレが途中で無くなり中途半端な長さになり、頭を悩ましていた時、それを見ていた針子仲間から自分達の余った物を足しておくからと、優しい言葉をかけて貰っていた。
ひまりはじんわりと心が温まるのを感じ、それを全て取りだす。