【イケメン戦国】プレゼントを探せ!〜徳川家康誕生祭⑤〜
第8章 【真紅の水仙】〜誕生祭⑤〜前編
一月三十一日。
今宵の月光は、
研いだ刃のように鋭く放つ。
その、ぞくっとするような美しさの前では、身じろぎすら、呼吸すら、出来なくなる……
そんな気さえ起こした。
夜が更けた安土城にて__
開かれようとしていた祝宴。
それは今宵、一人の青年の為。
捻くれ者で野心家。
しかし、天邪鬼な彼の中に隠れた優しさを武将たちは、そして愛する者は誰よりも知り、青年が生まれた日を心から祝おうとしていた。
宝探しの材料集めから始まり、
時まで越え繋いだ思い出の時間は……
何よりもかけがえのない『宝』
そして……
その祝福の時はまだ続き……
まだ、宝探しは続く。
「これ……!」
無言で差し出された箱。
家康は中身を見て、目を丸くして凝視。
信長は何も告げず、
ただ月を見上げ微笑を浮かべた。
真の秘めたる贈り物に気づいた時。
お日様色から月色に髪を染め、深まった綺麗な翡翠色の目は、奥に何を映し出すのか……
月あかりが差し込み、
浮かび上がらせた、雪中花。
雪の中でも凛と茎を伸ばし、香り高い花を咲かせるところから、この名で親しまれている純白色の水仙。
その前に一つの影が落ちる。
(えっと、確かこの辺りに……あ!あった!……少しだけ摘ませてね)
昼間の可憐な姿を消して、木々の先端から滴り落ちた露雫を纏い、幻想的に光り輝いた水仙を庭で見つけ、ひまりは数輪だけ摘むと、白いエプロンをひらりと夜風に舞い上がらせ、城内へと戻って行った。