【イケメン戦国】プレゼントを探せ!〜徳川家康誕生祭⑤〜
第6章 【現代 平成30年1月31日12時】〜思い出の時間〜
五人は一斉に動き出す。
荷物を急いで持ち、ひまりはケーキの箱を風呂敷に包み、大事に胸で安定感を取りながら抱くと、部屋の戸締りをしっかりして、エレベーターを下り、家康と一緒に管理人の元へ向かう。
「おじさん!ありがとう!!鍵、ここに置いていきます!……っ!身体ご自愛下さい!」
ひまりは涙を堪えるので、精一杯だった。
「ひまりは、必ず幸せにしますので……」
家康は小刻みに震えかけた肩を抱いたまま、一礼して走り出す。
管理人はただ静かに息を吐き、走り去る二人の背中に向かって、目尻にシワを寄せ顔の横でゆっくりと手を振った。
五人はエントランスを出て、
灰色の重苦しい雷雲を追う。
「あの方角はまさかっ……本能寺跡!」
「本能寺跡!?」
ひまりは佐助の言葉に驚いたように声を上げる横で、家康は華奢な背中を支え、押すようにして走る速度上げる。信長は「本能寺」に敏感に反応して、眉をピクリと吊り上げた。
「ひまりさんと俺は、本能寺跡でワームホールに呑み込まれたので、その可能性は大いにあります」
「もし間に合わなければ、秀吉が蒼い顔をして城中を走り回るだろうな」
「み、光秀さんっ!はぁ、はっ……冗談でもそんな事言わないでくだ…さ…い……っ
光秀はにやっと笑い、喉を転がす。しかし、不幸中の幸いかマンションから本能寺跡は目と鼻の先。
小さな石碑の周りから、咳き込みたくなるような霧と緊迫感が漂う漆黒の靄。
辿り着いた瞬間、
頭上で轟く大きな渦。
ゴロゴロ……ゴォォォ…!!
唸りだした空。
ピシッピシッと、走る稲妻の光。
「来るな……フッ。次はどのような場所に連れていく気だ」
「出来れば安土城付近に、降りたいですね」
「くくくっ。政宗か三成の頭上でも良いぞ」
「ひまり!それ、しっかり持ってて!」
「う、うん!!」
パラパラと降り出した雨に、家康は着ていたブルゾンを脱ぎ、ひまりの頭に被せ、軽々と横抱きにする。ひまりは覚悟を決めたように、目をぎゅっと閉じると同時に……
大事に風呂敷包みを抱え込んだ瞬間。
ドォォオオーーーンッッ!!
何かを根こそぎさらって行くような
威嚇的な音が鳴り響いた。