【イケメン戦国】プレゼントを探せ!〜徳川家康誕生祭⑤〜
第5章 【現代 平成30年1月31日9時】〜二人の時間〜
参列者の人がわらわらと動き出して、
ハッと意識を戻す。
「ご、ごめんね!ワームホールの出現時間が大よそしか予測出来ないから、なるべく早く戻るように言われてるのに!……」
昨夜、就寝前に佐助くんから受けた説明を思い出して、繋いでた手を引っ張って走り出そうとすれば、身体が後ろに傾いて……
つま先が少し地面から浮く。
「え…………」
二人の間で少し頼りなく繋がった手。
振り返れば、そこには口元をきつく閉め、何処かぼんやりした表情を浮かべた家康がいて……
「どうしたの?……ほら、行こう!」
ちょっと不安になって語尾だけ明るく弾ませると、家康は手を繋いでいないほうの右腕で、私と繋がっている自分の左腕の肘辺りをぎゅっと掴んだ。
「あんなの着たいんじゃないの?本当は……」
あんなの?一瞬、家康の言っている意味が分からなくてキョトンと首を傾げ、聞き返せば……
絡んだ指にグッと力が入る。
「ずっと見てたし。あの衣装は……俺たちの時代には……」
「ずっとって……あ!もしかして、花嫁さんが着てたウェディングドレスのこと?」
家康は頷く代わりに目を伏せた。
でもため息を吐いて次に見せてくれたのは、真剣な瞳眼差し。
(家康……)
何が言いたいのか、
その瞳から痛いほど伝わり……
私は頭を下げて、
ローファーのつま先を寄せる。
(きっとここは平和だって、乱世とは違うって言いたいんだよね)
私が今、
言えることがあるとすれば……。
暫く流れた沈黙を打ち破るように、
私は顔を上げる。
「ドレスは作れるから!それに一番大事なのは、それを見てくれる人が側に……一緒にいてくれなきゃ……何の意味ないよ!」
そう言って、精一杯の笑顔を見せた。