【イケメン戦国】プレゼントを探せ!〜徳川家康誕生祭⑤〜
第5章 【現代 平成30年1月31日9時】〜二人の時間〜
徒歩15分程の道のり___
苺農園のパンフレットに記載されていた、アクセス地図を思い出しながらタクシーが拾えそうな駅付近に向かう。
大通りの歩道。
田園の風景から少しずつ変わりゆく景色に、バスで寝ていた家康は興味津々で目や首を動かして、質問を繰り返す。教科書を初めて開いた小学生みたいに、熱心に知識を得ていく。
「『ドラックストア』?」
「うん!お薬屋さんでね。お医者さんに行かなくても、薬剤師さんって方がいて……えっと……ーーーーで、日常に使うものとか、化粧品とか……ーーーーー」
私は、少しでも伝わりやすいように言葉を選びながら一つ一つ答えた。
十字路の交差点。横断歩道を渡り、左に曲がって、駅に向かって真っ直ぐ伸びた一本道に出る。車道を走る車の音、微かに電車の音が遠くに聞こえた時。
もう一つ、耳に届いた……
カーン…カーン…
長く響いた鐘の音。
「「「おめでとうーーっ」」」
盛大な拍手と声に反応して、足を止める。
水色の三角屋根が特徴的で、童話の絵本から飛び出したような小さな教会。それが歩道に沿った白いフェンスの奥に建っていて、緑に包まれたガーデンの中にはカジュアルなフォーマルの装いをした20人ぐらいの男女が花道の両端に分かれ、入り口から出口へとまばらに参列。
白い大きな両開き扉前に、煌びやかな晴れ姿で現れた新郎と新婦にお祝いの言葉をかけている所に、私達は偶然にも出くわした。
「結婚式だ〜……花嫁さん綺麗……」
「『けっこんしき』って、確か祝言のことだよね?」
私は、視線をある一点に釘付けたまま首を縦に落とす。
モーニング姿の新郎さんにお姫様抱っこされ、満開の花のような笑顔を浮かべた新婦さん。純白のスレンダータイプのウェディングドレス姿に、すっかり虜になってうっとり。
(今から、披露宴に行くのかな?)
背後には、道端に寄せられた黒い高級乗車が一台。参列者の人の数人の手に握られたカゴ。カラフルな何かのシャワーを浴びて、ゆっくり出口に向かって歩いてくるのが見えて、私達は慌てて道を開ける。
映画のワンシーンのような、数分間。
黒い高級車が走り去る所まで、
つい夢中で見てしまっていた。