【イケメン戦国】プレゼントを探せ!〜徳川家康誕生祭⑤〜
第4章 【現代 平成30年1月31日5時】〜萌の時間〜
ツアー客を乗せ、
ゆらゆらと心地よく揺れるバス。
睡眠不足だった家康は、最初こそ緊張して体を強張らせていたが、次第に猛烈な眠気に誘われ、意識を手放し、規則正しい寝息を立て始めた。
(夜に宴も控えているから、今の内にゆっくり休んで貰わないとね)
誕生日祝いの言葉。
まだ掛けれない歯痒さも感じつつ、ひまりは窓から京都の景色を眺める。苺を手に入れれば後は家に帰り、持ってきたスポンジに生クリームで仕上げをして、ワームホールで戦国時代に戻るだけ。
そんな事を考えている内に、
ふと思い出した光秀の言葉。
(そう言えば、信長さまが用意したものって……?)
現代に来てからあまりにも慌しく、すっかり忘れていたひまり。思い出すと急激に気になりはじめ……うーん。うーん。と、頭を捻っていると肩に重みを感じて首を横に動かす。
(二人でって言われたから、二人で見つけないとね)
自分の肩に寄りかかる、ふわふわの猫っ毛を一度だけ撫でた後……
(うーんと。駅から近いから、帰りはここまで歩いてタクシー拾って……あ!近くに教会もあるんだぁ〜)
ひまりはバスに乗り込んだ時に添乗員から渡された、苺農園の案内パンフレットに目を通した。
京都駅から一時間以内で、辿り着いたのどかな場所。辺りに広がる、田園風景。灰色の砂利道、数件ある民家の後に見える、こんもりとした山の輪郭。
そんな中に、建てられた三棟の白いビニールハウス。
昔ながらの土耕栽培で、自然のめぐみいっぱいの苺を提供する農園。 わらわらとバスから降りるツアー客の後に続き、二人は地面に足をつけて、自然の恵みである新鮮な空気を吸い込む。
「ん〜〜何かホッとするね!」
「……まだ、眠い」
「ほら、早く早く!」
京都駅に着くまでの間。
制服姿を気にしていたひまりだったが、苺狩り目前にすっかり気にならなくなり、ハイテンション。カップル、友人同士のグループ、家族づれ、ツアー客に紛れ欠伸を一つする家康の手をグイグイと引っ張り、スカートをひらつかせながら、ビニールハウスの中へと向かった。