第2章 後編
ローは特に抵抗することもなく、海楼石をつけられて処刑台に立っていた。
目の前に広がる海。
皮肉なことに、ユーリが死んだ同じ場所で、彼の処刑が行われようとしている。
どこまでも続いていく暗闇の海を、ローは無表情で見ていた。
「何か言い残すことはあるか?」
そんな彼の背に向けて放たれた言葉。
銃を構えている彼らは、少しでもローが変な動きをすれば容赦なく撃ってくるだろう。
「…ねぇよ」
ローは声を殺して笑った。
抵抗する気など、もうなかった。
先ほどのロボットは生きていて欲しいようだったが。
どうやらそれは、無理みたいだ。
この状況もそうだが、やはり彼は心のどこかで死を望んでいた。
ローは静かに瞳を閉じた。
いったい何時から幻覚を見ていたかは分からない。
どうせならユーリ本人が出て来てくれればいいものを、現実主義の彼はそこは認めなかったのか。
その事実に再び笑みが零れる。
いや、あのユーリが来てくれただけでもだいぶ救われた。
ーーーそういえば名前を一度も呼んでやれなかったな
それは向こうも同じだが、最後までユーリとしてローに寄り添ってくれようとした彼女には申し訳ないことをしたと、少し後悔していた。
せめてあいつは、無事でいて欲しかった。
あのロボットはこの茶番に付き合わされただけのただの被害者だ。流石に手は出されないだろう。
ローは彼女の無事を祈りながら足を一歩踏み出した。
死んだら、あいつに会えるだろうか。
死後の世界など考えたことがないローだったが、思わずその考えが頭を過った。
その馬鹿げた考えに、ローは軽くため息を吐く。
そしてローがもう一歩足を踏み出そうとした時、ユーリの声が聞こえた気がした。