第1章 前編
「ケア型ロボット、だと?」
ユーリが処刑されて2か月経ったある日、つる中将がインペルダウンを訪れた。
そして呼び出されたかと思えば、信じられない話をされた。
「最近のお前さんは見るに耐えかねる。仕事自体には何の支障もないだろうが、このままだとお前、何時か死ぬぞ」
つるの言葉にローは眉をひそめた。
自分の身体のことは、医者であるローが一番分かっている。
死の外科医だろうがなんだろうが、彼が持つ医療の知識は本物だ。
わざわざ指摘される筋合いはない。
「食事もろくに取らない、休みも取らない。お前さん、最後に寝たのは何時だ?鏡で自分の顔をよく見てみろ。酷い顔をしておるぞ」
彼女は鋭い視線をローに向けた。
そんな彼女の視線にローは目を細めると、同じように睨みつける。
確かに最後に寝たのが何時かなんて覚えていないが、仮眠という名目で軽く寝ていたはずだ。
仕事に支障がない以上、他の者にとやかく言われる筋合いはない。
中将という立場で倒られても困るという意味ならば、おれはそんな軟な人間ではないと、目の前の女も分かっているはずだ。
「おれの心配よりも、てめぇの心配したらどうだ?今すぐ死にそうな面してんじゃねぇか」
ローは彼女に鋭い視線を向けたまま、鼻で笑った。
その歪んだ笑みに、つるは片眉を上げる。
「失礼だね、私はまだまだ現役じゃよ。それよりもお前、いつまでここにいるつもりだ?早く本部に戻ってこんか」
彼女のその言葉に、ローは眉をひそめた。
ユーリが死んだ以上、彼の任務は解かれた為ここにいる必要はない。
それでも彼は、この場に留まり続けている。
「後始末が色々残ってんだよ。本部の仕事もちゃんとこなしてんだろうが。てめぇにとやかく言われる筋合いはねぇ」
そこまで言うと、ローは話は終わりとばかりに彼女の部屋を後にした。
背後でまだ彼女が何か言っていたが、これ以上無駄話に付き合う気はなかった。