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幻影の花唄【ONE PIECE 】

第1章 前編



インペルダウンに用意され執務室。

ローは手に持っていた手配書を机の上に投げた。

その手配書に映る、何処か驚いたような表情をしている彼女は、もうこの世にいない。
彼女は1か月程前に、ロー自らその命に手を下した。

彼女が見せた最後の表情。

それは今でも、彼の中で消えることはなかった。




1年前、長きに渡って行われた彼女の逃走劇は、ローが現れたことにより、あっさりと幕を閉じた。

彼女の能力はオペオペの力と相性が悪いようで、ROOMの中に閉じ込めてしまえば、拍子抜けてしまうほど簡単に捕まえることが出来た。

その事実に驚いていた彼女だが、こんな奴に何年海軍は費やしていたんだと、ロー自身も呆れを通り越して驚いていた。

捕らえられたユーリはその懸賞の額、そして能力の危険性から地下6階「LEVEL6」“無限地獄”へ投獄された。

それを聞かされた時の彼女の表情には、恐怖が浮かんでいた。
だが、ローから言わせてみれば、拷問も何もないその階は監獄と言うには生温すぎる。

彼女がその事実を知った時は、安堵の表情を浮かべていたが、その時の彼女は知らなかったのだろう。

ローはユーリ専属の看守として任命されていた。
大佐という立場にありながら看守とは意味が分からなかったが、彼女の能力に対抗できるのがローしかいなかったのだろう。

ローは渋々受けざるを得なかった。

そしてその日から、彼はインペルダウンに所属することになった。
期間はユーリが処刑されるまで。


あの頃は、火拳のエースも捕まった時期だろうか。

同じ時期、同じ場所に投獄されたので、檻越しに話している彼女の姿を見たことがあった。

それを目撃した時、彼の中で沸き起こった激情。
当時はそれが何なのか、分からなかった。


ローはため息を吐くと、机の上に散らばっている書類に目を通し始めた。
中将という立場上、毎日のように彼にはやることがある。







机の上に置かれたユーリの手配書。










彼女の姿を確認できる唯一のそれを、彼は未だに捨てられずにいた。

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