第6章 ホントのところ
「き、嫌いなわけない!その、最近犬夜くんといるとなんだか、意識しちゃって、えと、目が合わせられなくて…。あの…嘘ついちゃって、ごめん…」
犬夜くんは私の手を握って、言った。
「オレのこと意識してくれてるんですか?それで目が合わせられなかったんですね!なぁんだ、よかった〜!」
すると犬夜くんは少し不思議そうな顔をした。
「ん?でもそれって、オレのこと好きってこと…ですか…?」
「えっと…そう…」
私は頷いた。
「本当ですか!?」
「うん」
犬夜くんは嬉しそうな顔をして、
「あの、先輩っ、好きって言ってほしいです!」
と迫ってきた。
「えっ」
「イヤ…ですか?」
「ううん。…犬夜くん、好き…です」
「先輩、目を見て言ってくださいよ」
犬夜くんは私の顔を持ち上げた。
犬夜くんと目が合う。顔が近い。
「〜〜っ!」
「先輩、ほら早く言ってくださいよっ!」
もう言うしかなさそうだ。
「すき…です…」
「えへへっ、嬉しいな!オレも大好きですよ、先輩!」
そう言って唇が重なる。
「んっ!?」
唇が離れると犬夜くんはとても嬉しそうな顔をしていた。
「先輩がオレのこと好きなんて、嬉しいなぁ〜」
「…っ!ほら、もう、帰ろ!!」
「えっへへ、嬉しいなぁ、キスもしちゃったし!」
言われて私は余計に恥ずかしくなって、俯いた。
「あれ?先輩、キス…イヤでした?」
私は首を振った。
「恥ずかしくて…あと、はじめて…だったし…」
「!!先輩、はじめてだったんですね?先輩のはじめてがオレで嬉しいです!ね、先輩、もっかいしましょ?」
「えっ、ちょ、んんっ!」
またキスをされる。
「これでセカンドキスもオレのものですね!」
「…っ、もう、早く帰ろ?」
そう言うと、犬夜くんは私と手を繋いだ。
「こうしてもいいなら帰ります!」
「こ、これでもいいからっ…!」
「やったー!じゃあ帰りましょう!!」
犬夜くんはそのまま私の家までついてきた。
「ここが先輩の家…!」
「ん…送ってくれてありがと…」
「いえ!彼氏としてはもちろんです!」
"彼氏"という響きに少し違和感と嬉しさを覚える。
「それじゃあ、先輩、また明日です!」
「うん、また明日」
そう言ってブンブンと大きく手を振る犬夜くん。
見送ってから、私は家に入った。