第17章 甘い香りに誘われて
〜犬夜side〜
「…」
あの遊吾が無言。
珍しい。
「……んんん?、先輩ちゃん、すごくない…?」
オレたちの目の前には華美さんの作ったチョコが置かれている。
「すごい」
「…美味そう…」
「あげないよ」
華美さんの手作りなのだろう。
とても美味しそうで、見た目も良かった。
「…ん!」
1口食べてみると、甘さ控えめのチョコの味。
「おいひい…」
「…くっ……ま、まぁ、俺は義理チョコあるしいいもん」
思わず顔がにやける。
料理苦手だと言っていたはずなんだけどな。
とても美味しかった。
「けんけん…ほんと先輩ちゃんのこと好きだな…先輩ちゃんも嬉しいだろうなあ…」
オレはどんどん食べ、すぐに完食してしまった。
「…あれ?」
よく見ると、袋の底に何が入っている。
「あ…」
そこには先輩の字で、
"ハッピーバレンタイン!犬夜くん、大好きだよ> <♡"
と書かれていた。
「は、華美さぁぁん…」
ため息混じりの声で華美さんの名を呼ぶ。
「ははっ、お前良かったな、先輩ちゃんも粋なことするね〜」
オレはとても嬉しくなって、メッセージカードを丁寧にしまった。