第17章 甘い香りに誘われて
〜華美side〜
「あ、あのっ…」
「えっとー…なんですか?」
「これ、貰ってください!」
「え!?あ、や、ちょ、ちょっと!!」
なんだか見てはいけないものを見た気がする。
「…」
声をかけるべき…なのだろうか。
「はぁ…オレ彼女いるのに」
その言葉を聞き、少し嬉しくなる。
だけど。
そうだよね。バレンタインだもん。
犬夜くんもモテるよね。
かっこいいし。
ぐるぐる考えていると、
犬夜くんがこちらに気づいて声をかけてきた。
「あ、華美さん!!」
「チョコ美味しかったです!!あとメッセージカードもとっても嬉しくなりました!!ありがとうございます〜!」
「あ、あれ?華美さん…?」
私ははっとして、すぐに返事をする。
「あ、あー!ううん、こっちこそ、犬夜くんに嬉しいって思えてもらえて、嬉しいよ」
「なんだか、華美さんおかしくないですか…?」
おかしいわけじゃない。
なんだか、モヤモヤする。
あれ、これって
「もしかして、華美さんさっきの…見てました?」
「え、あ、あー…見ちゃった…かな…」
誤魔化そうとも考えたが、咄嗟に正直に答えてしまう。
「大丈夫です。さっきの子と別になんの関係もないですから。」
「オレには華美さんがいますし、華美さんが好きです。オレを信じてください。」
そう言って、犬夜くんは私の目を真っ直ぐ見つめる。
私は嬉しさがこみ上げてきた。
「うん!ありがと」
なんだか犬夜くんに抱きつきたくなって、そのまま抱きついてみた。
すると、犬夜くんは抱き返してくれて。
犬夜くんの腕の中はとってもあたたかかった。