第17章 甘い香りに誘われて
〜犬夜side〜
家に甘い香りが充満している。
「姉ちゃん何作ってんの?」
「ん?チョコだけど?」
「え、あ、そっか」
そういえば今日バレンタインだっけ。
「朝から面倒じゃない?」
「彼氏のためなら…!」
「え、姉ちゃん彼氏なんていたっけ」
すると、姉ちゃんは無言でチョコをひたすらかき混ぜ始めたので、オレは察して、彼氏については触れないことにした。
朝ごはんを食べ、早めに家を出る。
「いってきまーす」
日課となった、華美さんを迎えに行くこと。
「あ!おはようございます!華美さん!」
「おはよー!」
すると、華美さんはおもむろに、カバンから何かを取り出した。
「はい、これ、バレンタインデー!」
華美さんの手には、綺麗にラッピングされているチョコレートがあった。
「!ありがとうございます!!」
もらって、すぐに、
「さっそく食べても良いですか…?」
「んー、これから学校あるし、あとでの方がいいと思うな」
言われて、オレはもらったチョコをカバンにしまった。