イケメン戦国『プレゼントを探せ!~徳川家康誕生祭~①』
第5章 プレゼントを探せ!~三十日、辰の刻~
「あぁ。次は三成の御殿に行ってくれ。」
秀吉の言ったことに、家康がピクリと反応する。
「……秀吉さん、何て言いました…?」
「ん?聞こえなかったか?次は三成の御殿に行っ……」
「嫌です。」
秀吉が話しているのを、途中で遮る家康。その顔は、深く眉間に皺を刻み、不機嫌を一切隠していなかった。
「なんで、あいつのとこに行かなきゃいけないんですか。三成飛ばして次の人が誰か教えてください。」
「こら。仲良くしなさい。っていつも言っているだろ。それに、あいつ、かなりはりきってたぞ。」
「なら、尚更行きたくありません。あいつに関わるとろくなことが起きませんから。」
「まぁまぁ!家康、落ち着いて!三成くんも、家康のために、頑張ってくれてるんだし、一緒に三成くんのとこに行こっ!ねっ?」
「……はぁ……今回だけだからね……」
陽菜に宥められ、家康は不貞腐れながら、盛大に大きくため息をつき、牛乳をしっかり持って歩きだそうとしたとき、秀吉が声をかける。
「まだ材料集めしないといけないから、牛乳持ってたら荷物になるだろ。俺が預かっとく。」
「…いいんですか?」
「これぐらい、気にするな。三成のとこでも頑張れよ。」
「言われなくても……」
「二人とも、気を付けてね~」
「はぁい!行ってきます!秀吉さん、お姉ちゃん、本当にありがとう!」
陽菜は、二人に向かって手を振り、先に歩いていた家康に小走りで近づくと、二人はどちらからともなく、手を繋いだ。
その光景を、秀吉と香菜は、優しい表情で見ていた。
二人の姿が見えなくなると……
「ふぅ……指令内容を、全く知らないふりするのも、なかなか大変だな。」
「本当に。でも、大変だったけど、楽しかったね♪」
実は、佐助だけでなく、二人も指令とコース内容などを考えていたのだった。
そのことに、家康が気付いていたかどうかは、わからないが……
「まぁな。家康も、あぁ言いながら楽しそうにしてたしな。」
「ふふ。なら良かった。この調子で材料集め、頑張ってほしいね。」
ふんわりと笑いながら、二人は牛乳を厨に持っていくため、城のなかに入っていった。
【三十日、辰の刻 ~完~】
さくちか様作品『プレゼントを探せ~徳川家康誕生祭~②』に続く。