第5章 番外編
猫又
「おいでおいで、チッチッチッチ」
「何をしてるんだお前は」
「生垣の下ににゃんこ居るぞセブ!」
何だ何だと昭久の視線の先を見ると金色の目をした黒猫が生垣の下から此方を見ていた。
そう言えばこいつは無類の動物好きだったか。
ずずっと持って来た茶を啜る。
「煮干し取ってくる!セブ見張ってて!」
『ふふふ、昭久様、持ってきましたよ』
「鴉マジ天使」
『天狗です』
何ボケているのかと見ていたら
『何?さっきから』
『黒猫だそうですよ』
リドも歩いて来て、結局この面子になるのかと
内心笑って。
「ねーこねこ、煮干しほれほれ」
そう言いながら煮干しをばら蒔くこいつも子供だなと思っていたら
煮干しに釣られたか、黒猫ががさりと歩み寄ってきて・・・
長い尻尾が二又になってたので思わず茶を噴いた。
「ちょ!セブ驚き過ぎ!」
「ゴホッ・・・済まん」
リドも初めて見る猫の状態に珍しそうに「へぇ」としゃがんで見る
『猫又だったのですね』
『ネコマタ?』
『古来から日本の猫は長く生き、妖力を得ると妖怪になると言われております』
『ふぅん』
煮干しを頬張る猫を見て、昭久は嬉しそうに
「通りで出て来ない訳だ、猫又だったかー」
「式には確かもう猫又は居たな」
昭久の所持してる式を思い出して、呟くと
「式とナマモノは違うってば、お前俺の飼い猫になるかー?」
「ナマモノって・・・」
昭久の言葉に返事をするかの様にニャアと鳴き
奴の伸ばした手を舐めて全身で甘える姿に
ああ、またホグワーツでの生活が賑やかになりそうだな。
両手を使って猫を抱き上げて
「よし、そうと決まったら親父に報告とシャンプーだな!」
「ニャア」
『普通、原久さんに聞いてから飼わない?』
「大丈夫、親父もこう言う妖怪に弱いから」
狩衣が汚れるのも気にせず抱きしめてる姿は
子供の様だなと思う。
昭久が猫を洗ってるうちに原久殿が嬉々として猫用の缶詰を買ってくる姿を見て。
この親子はソックリだなと思わずをえなかった。
猫又、猫股(ねこまた)は、日本の民間伝承や古典の怪談、随筆などにあるネコの妖怪。大別して山の中にいる獣といわれるものと、人家で飼われているネコが年老いて化けるといわれるものの2種類がある