第3章 本編40~56【完】
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「・・・はよ、宗近」
「晴久公?どうした。目の下に隈を作って珍しいではないか」
基本午前中に執務を終わらせ、滅多に徹夜をしない晴久の
綺麗な顔が珍しく隈を作り顔色が悪い。
日頃黒い発言をする三日月宗近が思わず声を掛けた。
「市の担当する世の仕事が終わったみたいでな、審神者の任が何かあるまで休みになるから安土城に帰るんだってよ」
「? 何故晴久公が徹夜をする?」
「市の所のこんのすけが転がり込んで来て"お市様の刀剣達も市様の世にて過ごせるべく政府を説得する知恵をお貸し下さい"だと」
心配そうな光忠の持ってきた茶を啜り、頭をがりがりかきながら
説明する晴久の顔は、顔色は悪いが少し微笑んでいて。
「あれ?毛利公に相談しなかったの?」
「義兄上は今、前任斬ったから事後処理で報告書に追われてるぜ」
「まあ、その表情なら良い案が出たのだろう?」
まあ、何とかなるんじゃねえ?と茶を飲み干す己の主はどこまで人が良いのやら。
「市のこんのすけの説得が通れば俺や義兄上もお前らを引き取る時に苦労しねえだろ」
「晴久公・・・僕達の事引き取ろうとしてたの?」
「ん?嫌だったか?光忠」
「ううん!全然、嬉しいよ!」
五虎退からの文を読んで、微笑む晴久を見て
光忠と三日月は目を合わせて密かに笑う。
「五虎退君からのからの文はどうだい?」
「・・・いや、あいつ大丈夫か?謙信公と一緒に居るって書いてるぞ?」
え、と固まる2人を他所に笑みから眉間に皺を寄せてうーんと唸る
無事に戻ってくりゃいいんだけど。
あ、と何かを思い出した光忠は声を上げて
「晴久公、皆集まって来てるから朝御飯!忘れてた」
「「忘れるな」」
何だかんだ言って仲の良い三日月と晴久のハモりに
光忠は嬉しそうに笑って。
「五虎退君が戻って来たらお祝いしよう」
歌仙さんも薬研君も心配してたから。
早く帰って来ると良いねと話しながら3人で広間に向かった。
のは、いいが
自分の主の顔色が悪いとがばっと顔を両手で掴まれて
「ちょ、主の綺麗な顔に隈出来てる!!」
清光にしこたま叱られてる晴久が広間で見掛けられ
集まって来てた刀剣達は苦笑いを浮かべるしか無かった。