第3章 本編40~56【完】
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つん つん
未だ恐怖が抜けてないのか元就のこんのすけは
ブルブル震えながら丸まっているのを
元就が抱き上げながら突っつく。
顔を上げたところでわしわしと撫でて
落ち着く様にぽんぽんと背を叩くともふもふと・・・
「元就?市、端末の説明してるのだけど聞いてる?」
「案ずるな、聞いておる」
元就の優しい手の温もりにこんのすけは元気を取り戻し
子犬の様に元就の周りを駆ける
「元就様、元就様」
「何ぞこんのすけ。少し待っておれ、市が油揚げの乗った料理を作る」
「ふふ、端末の説明が終わったらきつねうどん作ってあげるね」
「わあい」
晴久や市の管狐より幾分か幼い性格なのか
子供の様にはしゃぐこんのすけの腹をくすぐりながら
毛並みを撫で回してやると嬉しそうに尻尾を振る
まあ、市のこんのすけも晴久のこんのすけも
ベッタリと己の審神者に懐いてる故に、自分もこのようになるのかと想像した。
「こう、ここを触ればいいの。書類はこう」
「分かった」
端末の説明を聞きながらこんのすけを構ってた故に
「本当?」と疑われたが目の前で同じ操作をすれば納得し
己のこんのすけを抱き上げて厨に向かった
「義兄上覚えるの早いな」
「見ていれば操作は簡単であった」
カタカタと端末を操作しながらこんのすけを膝に乗せ
片手で撫でてやると気持ち良さそうに溜め息を吐く
義弟がそれを物凄い顔して見てるのを蹴り飛ばしてやった
「チッ、避けたか」
「避けねえと死ぬだろうが!」
「何ぞその顔は」
「動物愛でてる姿なんざ初めて見たからな」
「市しか見た事は無いであろうな」
幼い頃、市が大量の猫を連れて遊びに来た事があったな。
小動物と触れ合う機会が無い故に、大変驚いた記憶がある
こんのすけもその話を聞きながら、ぎゅうぎゅうと身体を摺り寄せ
くっ付いて来る様に笑いを堪える。
そして、先程から執務室の外に気配を感じ
煩わしくなったのでスパンと襖を開けてやると短刀達がなだれ込み
「其方等か、奥に引きこもって居たのは」
「あの、新しい…主様ですか?」
恐る恐る近寄って来る五虎退の頭を撫でてやると全員の顔が喜色に染まり
きゃあきゃあと喜びの声を上げるチビ達の頭を撫で
…気付いたら短刀に埋まっていた
「ごはん出来たけど…元就何してるの?」
「…我も分からぬ」
子に懐かれるなぞ初めてぞ。