第4章 きみを連れ出して
ルームサービスでワインが到着して
またグラスが乾杯の音をたてる。
「今度は何に乾杯しよっか」
「え、あ、そうだな
ベタに出会い、とかですかね」
「はは!くっせえなあ」
「あ、なんですか!
じゃあ智さんが決めてよ!」
「いや、出会い、だな!」
「バカにしてる!」
ベットの上で2人、照れたように笑い合って
2度目の乾杯をした。
私、どうしたんだろう。
彼のこと、大好きだったはずなのに
今は何も知らない、この人に
ドキドキして。
傍にいてくれることが、嬉しくて。
出会って2時間。
そんなことがあるんだろうか。
「どったの、ちゃん」
私を除き込む智さんを見て思い出す。
「…あ、いや」
バカだ、私。
智さんには想ってる人がいる。
私なんてただの暇潰しなのに。
「…そろそろ、帰ります」