【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】
第7章 アザミの家
間髪入れず、明が次の紹介を始める。
「コイツは久那闇裡(くなあんり)。俺ら兄弟のじいちゃんの、いとこのひ孫。まあ遠い親戚ってとこだな。歳は11、今年で12」
出久の正面に立っている明が身体をずらすと、そこに長い黒髪を携えた少女が立っていた。背は明の首もとくらいで、顔つきもまだ幼い。初めて見る人間に緊張しているのか表情は強ばっているが、それでもはっとするほどきれいな顔立ちをしている。長い睫毛の下にある深海のような濃紺の瞳は、鮮やかな青の瞳を持つ明とひかるとの血の繋がりを感じさせた。
「……はじめまして。久那闇裡(くなあんり)です」
蚊の鳴くような小声を少女が発すると、その小さく開いた口から鋭く尖った犬歯がのぞくのが見えた。出久の視線を感じ取ったのかとっさに深く俯き、また明の後ろに隠れてしまう。
「こいつ人見知り激しくてな~。でもまあすぐ慣れるよ」
明はからからと笑いながら言った。確かに明の背後に隠れていても、少しだけ頭を出してこちらを興味津々に見つめてくるあたり、意外と一度打ち解ければ仲良くなれるのかも知れない。……そんな機会があるのかどうかは分からないが。
「いだっ!?」
と、突如右のお尻に突き上げるような激痛を感じ、出久は思わず悲鳴を上げた。血が出ているのではと思うほど痛むお尻をかばい、振り向くと、すぐ傍に幼い男の子が仁王立ちしているのに気づいた。
年格好は7、8歳くらい。癖のない黒髪に、燃え上がる炎のようなオレンジ色の瞳。しかし、瞳は左の一方しか見えない。もう一方の右目は顎まで伸びた前髪に隠れている。幼いながらもなかなか整った顔立ちをしているが、ぎらりと睨みつけるようなつり目と真一文字に引き結ばれた口はいかにも攻撃的で、今自分はこの子にお尻を蹴り上げられたのだとすぐに分かった。