【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】
第7章 アザミの家
「ありがとう! みどりくんやさしいね!」
陸はそう叫ぶと、花の咲くような満面の笑顔を見せた。それは本当に大輪の向日葵がいきなり花開いたかのような華やかさと輝かしさで、同性であるはずの出久も思わずどきりとしてしまうほどだった。実際陸も相当嬉しいのだろう、出久から離れた後も「みどりくん! みどりくん! おれが考えたの! 超カッコいいでしょ!!」と、飛び跳ねながら周りにいる子どもたちに近づいたり抱きついたりしている。
(な、何だったんだろう……嵐みたいだった……)
全力で抱きつかれてよれよれになっている出久に、潤は申し訳なさそうに眦を下げながら声をかけた。
「ごめん。癖が強いヤツばかりなんだ、ここ」
「そーそ。頭のネジぶっとんだヤツばっかり~。その点翔はまじ没個性もいいとこだよなー」
明が頭の後ろで手を組みながらのんびりと言う。なるほど確かに、先ほどの陸という少年は言わずもがな、ここの人たちは何か普通とは違う雰囲気を持っている気がする。少し話しただけなのに、或いは話してもいないのに、その異様さが匂い立つように出久の感覚を刺激していくのだ。
その点翔は、戦闘時こそ悪鬼のような戦いぶりをするものの、普段はA組の皆と何の問題もなく仲良くやれている。そういう意味ではこの中で一番没個性、目立たないとも言えるのかも知れない。
「……俺たちの中で唯一まともなんだ、あの子は。俺たちを大切に思うあまり、頭がおかしいフリをして偽りの自分を演じ続けてる。ずっと苦しんでるんだ」
潤が悲しげに微笑みながら言った。その葡萄色の瞳は、生きることも死ぬことも、すべてを諦めたように暗く淀んでいる。
「だから緑谷くん、翔を救ってやってくれ。頭のおかしくなった俺たちには、もうあの子を救ってはやれないから」