【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】
第7章 アザミの家
「……でもこうして見ると、何となく分かるよ、何できみが選ばれたのか。きみは「表」の人間って感じがする。地獄を見たことがないからこそ地獄に飛び込めるタイプの人間だな。オールマイトが選んだのも頷ける」
オールマイトは妙な価値観云々ってのは訂正させてもらうよ。そう言って明は笑った。何かとても面白いおもちゃを見つけたような、心から楽しそうな表情だった。
「ほら次ー。誰か自己紹介しろ」
明は出久の肩から手を離すと、そう言って次を促した。
途端、目の前に飛び出してきたのは紺色のジャージを着た少年だ。柔らかそうな金の髪がぴょんぴょんと跳ねている。女の子のように大きな瞳は鮮やかな紫色で、肌はひどく白い。体格も華奢で、ともすると本当に女の子に見間違えられそうな外見だ。
少年はそのくりくりとした瞳を出久に向け、にぱぁっと大口を開けて笑った。
「ひゃっははー! 陸! 陸! 陸だよ! 西荻陸! 潤兄のおとうと! 諒のにいちゃん! よろしくネ! よろしくしてネ!」
両足をそろえぴょんぴょんと跳ね回る少年の奇怪な動きに、出久は危うく2、3歩後ずさりしそうになった。振り切った動きといい、ピエロのような狂気を感じる笑顔といい、人間として大切な何かのリミッターが完全に壊れてしまっているのが、初対面にも関わらず容易に感じ取れたからだ。
「ねえねえねえねえ、みどりくんって呼んでいい? みどりやなんでしょ? みどりくんってね、超カッコ良くない? あだ名! やばい! やばい? いいよね? いいでしょ?」
おそろしいほどの早口でそうまくし立てると、少年はひときわ高く飛び跳ね、出久のすぐ前に勢いよく着地した。きらきらした紫色の瞳が一心にこちらを見つめてきて、出久は言葉が出ない。あまりの勢いに、何を言われたのか理解も追いつかない。