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【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】

第7章 アザミの家




「ちなみにこの施設にいるヤツは皆、オールマイトとワン・フォー・オールの秘密を知ってる。それが「継承」されたってこともね。翔の転校先にその継承者がいるって話で、皆盛り上がってたんだぜ。どんなヤツなんだろって」


 明は何でもないことのように言ったが、出久は心臓を直に鷲掴みにされたような心地がした。悲鳴のようにひゅう、と音が鳴るほど息を吸い込んで肺が苦しくなる。


 やはりそうだ。さっきの桜と翼の発言から気づいてはいたが、ここの子どもたちは皆「緑谷出久が何者か」を知っている。ワン・フォー・オールの秘密も。オールマイトはこのことを知っているのだろうか? 以前「うっすらと心当たりのようなものはある」と言っていたが、ここにいる人たちがそうなのか?


 分からない。分からないことが多すぎる。けれどこれだけは言えるだろう。


 ――この孤児院は、何か変だ。


 出久の不安もつゆ知らず、明は腰に手を当て、実に快活ににぱりと笑った。


「はは。まーはっきり言わしてもらえば滅茶苦茶地味だな! こんなのが日本の将来背負ってくのか~不安だな~って感じ!」


 ずしん!と重い石が背中にのしかかってくるような感覚を出久は覚えた。地味……こんなの……不安……。明が放った言葉はおそろしいほど的を得ていて、つまりは図星だった。自分はワン・フォー・オールの力をろくに使いこなせていない。肉体的にまだ器ができていないのはオールマイトにも言われたことだ。ただ改めて他人からそれを突きつけられると……自覚しているはずなのに落ち込んでしまう。


「冗談だって!んな落ち込むなよ~」


 ショックを受けて表情を固まらせている出久に、明は悪びれもせずその落ちた肩に腕を回して上下に揺さぶってみせた。まるで長年の親友に接するかのような態度だ。


 と、そのおどけた表情が急に消え、品定めをするような透徹した目つきに変わった。皮膚も肉も、その裏に隠された脳髄すら見透かそうとするような大きな瞳に、出久はたじろぐ。

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