【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】
第7章 アザミの家
しかしそれよりも、左の額から鼻筋、頬、顎にかけてギザギザに走る黒い傷跡が、とんでもなく目を引いた。皮膚そのものが腐り落ちて黒く染み着いてしまったようなその傷は、左目の虹彩の白さや瞳孔の青さをさらに際だたせ、独特の醜さと美しさとを同時に醸し出していた。
それだけではない。黒い傷は少年のシャツの袖から見え隠れする手首にも走っていて――そこで出久は思わず肩をびくつかせた。彼の指。よくよく見ると、1、2、3、4、5……6本ある。両手ともだ。小指の隣ににょきりと生えた、さらに小さな指。飾りなどではなく、ちゃんと少年の意思に従うように動いている。
……何故6本も? それに、顔や手首に走っているあの黒い傷はいったい? 言及するのもおそろしく、出久は自己紹介を返すのも忘れたまま生唾を飲み下した。そんな彼の様子を見て、少年がにやりと悪い笑みを浮かべる。
「あ、今気味悪ぃと思っただろ~。俺も思う! 指が6本とか、見ただけでちょっとビビるよな!」
少年は出久の奇異な視線などものともせず、6本の指を胸の前で広げてばらばらに動かしてみせた。自虐なのか何なのか分からず、出久は曖昧に笑うしかない。
「皆この施設に住んでる孤児なんだ。翔と同じ境遇。実の兄弟で血が繋がってるヤツも多いけど、身寄りがないのは同じだな。学校は飛影学園ってとこに通ってんだけど、知ってる?」
そこでようやく出久は彼らの素性を知ることができた。孤児。翔と同じ境遇。「ここにいる皆は全員家族だ」という翔の言葉が脳裏に呼び起こされる。
「し、知ってます……確か、政府の要人護衛をするSPとか、警察や自衛隊の特殊部隊とか、事務所を持たずに政府の組織に属して戦う『特務ヒーロー』を養成する学校ですよね?」
「そうそう! めっちゃ知ってんじゃん! さては君オタクだな?」