【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】
第7章 アザミの家
――出久がおっかなびっくり寄っていくと、何故かそのまま怒濤の自己紹介タイムが始まった。
「俺は西荻潤。潤でいいよ。よろしくね」
先ほど出久を手招きした、ひょろ長い少年がそう名乗って手を差し出した。
ぺったりとした癖のない黒髪は長めで、襟足くらいまである。前髪も長く、邪魔になるのか赤いピンでこめかみあたりに留めていた。眉はやや太く悲しげで、憂いを帯びた瞳は暗い紫色をしている。全体的に青白く痩せこけていて、今にも意識を失って倒れてしまいそうな頼りなさがあった。Tシャツにジーンズ。そしてなぜか、片手に2リットルのペットボトルをぶら下げている。ペットボトルには水らしき透明な液体が半分くらい入っていた。
「ゆ、雄英高校1年の、み、緑谷出久です……よろしく」
どうしよう。どう反応するのが正解なのか。名乗られたので、出久もとりあえず自己紹介して差し出された手を握り返した。
するとそのひょろ長い少年の横から、また別の顔がひょこりと顔を出す。
「潤兄さ、自己紹介簡潔すぎ! そんなんじゃ『継承者』くんもリアクション困るっしょ」
「そうかな」
「そうだよ」
ひょろ長い少年――もとい潤とは打って変わって、こちらの少年ははきはきとして快活そうだ。身体を横に滑らせ潤の背中から躍り出ると、何やら変な決めポーズをして自己紹介を始めた。
「んじゃ改めて。俺は北里明。明でいいぜ! 歳は16! 今年で17!」
びしっとこちらに向けられたピースサインの形をした手に、出久はただ目をみはるしかない。何とも勢いのある人だ。テンションがA組の上鳴なみに高い。
少年は出久と同じくらいの身長で、身幅もほぼ同じ。癖のないまっすぐな黒髪はほどよい長さで、A組のクラスメートの轟とちょうど同じような髪型だ。目はまん丸としていて大きく、果実のような鮮やかな青色の瞳がとても印象的である。