【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】
第7章 アザミの家
フルフェイスの怪しい男たちと、ティーンエイジャーの兄妹ふたり。端から見れば異様な光景だが、彼ら自身は仲良く談笑しているだけのように見えた。時折肩をたたき合ったり小突き合ったりして、気の置けない仲であることが伺える。誰なのだろう……駄目だ。想像もつかない。
「誰だろう、あれ……」
思わず呟いたときだった。窓をのぞき込んでいる出久から見て右手、先ほど翔と出久が歩いてきた廊下の方から、ちらちらとこちらの様子を伺う人間に気づいた。広間の壁に沿って、頭が縦にいくつも並んでいる。
出久は危うく上げそうになった悲鳴を必死に飲み下した。いったいいつから?
「あれが?」
「あれだ」
「冗談だろ。あの弱っちそうなのが継承者?」
「翔が連れてきたんだから、間違いないだろうね」
「まじかよ。なんつーか、度肝抜かれるくらいフツーだな」
「兄さん、人を見た目で判断しちゃ駄目だよ……オールマイトが選んだんだから、何かそれなりに理由があるんだよ」
「へッ。だとしたら相当妙ちくりんな価値観の持ち主なんだろーな、No.1ヒーロー様ってのは」
「明。言い過ぎ」
「地味! 地味!」
「陸だめだよ大声出しちゃ。聞こえちゃうよ」
「いやもう聞こえてるっぽいけどね……」
ひそひそ声で話してはいるが、なるほど確かに筒抜けだ。距離もそんなに空いていないし。まったく内緒になっていない内緒話をしていたその頭たちは、出久の視線に気づくと一様に「おっ」「やべっ」などと声を上げた。すぐさま頭を引っ込める者もいれば、そのままじっと見つめてくる者もいる。
どうしよう……どう反応したものか。出久が必死に考えていると、頭のうちの1つがすっくと立ち上がった。この距離から見てもどきりとするほど背が高い。おそらく190cm以上はある。
ひょろりと細い枯れ木のような体躯のその人は、青白い顔で微笑みながら出久を手招きした。
「おいで。翔は少し時間がかかるだろうから、その間俺たちと話をしよう」