【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】
第7章 アザミの家
「あ」
建物の玄関口まで一歩手前と言うところで、声が上がった。桜が立ち止まり、何かに気づいた、というふうに口に手を当てている。
「そういえば、今日あいつら来てるんだった」
「えっ!」
その言葉に、翔も驚いたように声を上げた。そのままちらりと出久の方に視線を送る。何だろう。今日は来客があって都合が悪い、ということだろうか。
「そっか……タイミング悪かったな。全員?」
「うん。伝えとこうか?」
「ごめん。頼む」
翔が頼むと、桜はひらりと手を振って踵を返した。すれ違いざまに出久の肩に手を置いて、「じゃあね、緑谷くん」と囁く。一度も名乗っていないのに名前を呼ばれるのは……しかも女子に呼ばれるのは何だか妙にぞわぞわして、出久は口をもごもごと動かした。翼(が変身した茶トラの猫)が、そんな出久をぎろりと睨みつけて桜に続いていく。
(こわい……)
二人(正確には一人と一匹)が建物の別の出入り口に向かって歩いていくのを見届けて、翔が言った。
「ばたばたしててごめんな。こっち」
翔と出久はそろって玄関口へと入った。建物の内部は玄関口より一段高くなっていて、床は木目調になっている。下駄箱も木製のものがいくつか置かれていて、ともすると学校のような印象を受ける内装だった。
二人は靴を脱ぐと、靴下のまま中に入った。すぐ傍に備え付けられた階段を上がり、3階で長い廊下に出る。両側はやはり木目調の壁で、番号や名前の書かれたプレートが取り付けられた扉や、外が見渡せる窓、トイレらしき扉もあった。全体的に設備がまだ新しく、木目も明るい茶色であたたかい印象を受ける。