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【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】

第7章 アザミの家




 と、建物の内側から門扉の隙間を覗く人影が目に入った。いつからいたのだろう。両手を握り合わせてそわそわしている。


「翔にぃ、翼にぃ、桜ねぇ!」


 矢も盾もたまらず、というふうに人影が叫んだ。聞き覚えのある声。すぐにわかった。さっきの「太陽」という名前の少年だ。


「太陽!」


 翔も駆け寄った。門扉の隙間から伸ばされる手をしっかりと掴み、呼びかける。


「大丈夫だったか?」
「うん」


 人影――もとい太陽は頷いた。どうやら彼は1-Aのクラスメートたちと別れた後、すぐにここに避難したようだった。


「けが……」
「今日は大丈夫。してないよ。ごめんな心配かけて」


 翔が握り返した手は小刻みに震えていた。心配していたのだろう。とても優しい子……いや、優しい人だ。


「あと、呼びに来てくれてありがとな。連絡係初めてだったろ? すごく助かったよ」
「! うん……!」


 翔の言葉に、太陽はたまらなく嬉しそうにコクコクと頷いた。連絡係。太陽はその任務をまっとうするためにわざわざ雄英に来たのか。ということは、さっきの敵との戦闘のようなことがたびたびあるということだろうか。


 翔は太陽から離れると、門扉に備え付けられたインターホンに歩み寄り、ボタンを押しながら声をかけた。


「帰ったよ。開けて」


 返事はなかったが、程なくしてガチャン、と門扉が開錠される重苦しい音がした。両側とも全く同じスピードで開いていく扉。内側にいる太陽ではなく、他の誰かが遠隔操作で開けたようだ。


 門扉の内側には、やはり太陽がいた。先ほどとまったく同じ服装で、子どものように身を縮こまらせて立っている。太陽は出久を見ると驚いたように肩をびくつかせ、すぐに踵を返した。あんなに身体が大きいのに、何て速さだろう。脱兎のごとく駆け出し、数秒後には建物の玄関口に逃げ込んで消えてしまった。


「気にしないで。知らない人には大体ああいう態度なんだ」


 翔が苦笑しながら言った。


 三人は今しがた太陽が逃げ込んでいった、正面から見て左側の一番大きな玄関口に向かった。門扉を少し奥に入ったところから玄関口にかけては、例の色とりどりのタイルが埋め込まれた小道のようなものが作られていて、とても綺麗だった。

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