【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】
第3章 対人戦闘訓練
勝己はどうやら出久が転校生に耳打ちするのを聞いていたようだ。全身から怒気を発し片頬を歪ませながら凄んでくる。いつも思っていることだがおよそ正義のヒーローになるために日々学んでいるようには見えない悪党っぽさだ。
「ただでさえてめェを叩きのめせねぇからイライラしてたっつーのに……これ見よがしにこそこそ陰口叩きやがっててめェはよぉ……」
「か、陰口なんてそんな人聞き悪いよ、僕はただ……」
「口答えすんなクソナードが!!」
反論しようとしたところをすかさず怒鳴りつけられ、出久は「ひぃ!」と悲鳴を上げてすくみ上がった。雄英で初めての演習があった際、二度と勝己を怖がらないと決心した出久ではあるが、今回は陰口を叩いていると勘違いされてもおかしくない行動をとった自分が全般的に悪いのでどうしても態度が下手に回ってしまう。
ずんずんと近づいてくる勝己。と、その前に誰かが立ちはだかった。背に庇うように腕を引かれ、突然のことに出久は少したたらを踏む。
「あぁ?」
「やめろよ。そういう言い方」
出久は呆然として、目の前に自分を守るように現れた背中を見つめた。転校生が出久と勝己の間に割って入ったのだ。赤い瞳が強い意思をはらんで勝己を見据えている。
「何だてめェ。やるってのか?」
「やるって何を? 雄英には私闘をしても良いって決まりでもあるのか?」
そう言い返され、勝己の怒りの矛先は完全に転校生へ方向転換した。額を近づけ、脅すように目を眇めて転校生をねめつける。しかし転校生は動じることなく、鋭く静かな視線を勝己に注ぎ続ける。
「正義のヒーロー気取りかよ、気色悪ィな」
「気取りもするさ。ここ、ヒーロー科だろ」
両者の間に何とも言えない沈黙が流れる。肉食獣がにらみ合っているかのような独特の緊張をはらんだ対面に、出久ははらはらしながら視線をさまよわせることしかできない。勝己は当然のごとく好戦的だが、転校生も転校生でまったく物怖じせずに真っ正面から対峙している。物腰も柔らかく優しそうな雰囲気を醸し出していただけに、まさか転校生がこんな行動にでるとは思ってもみなかったのだ。
「俺はまだここのことを良く知らない。でも他人にそういう突っかかり方をするのは良くないってことくらい分かるさ。爆豪は緑谷に何か恨みでもあるのか?」