【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】
第3章 対人戦闘訓練
なぜ彼と勝己を組ませたのか先生に問いただしたいくらいだが、決まってしまったものは仕方がない。せめて忠告だけでもしておけば何か対処できるかも知れないと思い、出久はクラスメート達の間に体を割り込ませ、囲まれて質問攻めにあっている転校生のもとへ近づいた。
「い、一ノ瀬くん、ちょっと」
出久の小さな声にも、転校生はすぐ反応した。前髪に隠れて影になったところから覗く赤い目が、微かに光りながら出久を捉える。
「何?」
赤く光る妖艶な目に反し、転校生の声はとても穏やかだ。性懲りなく跳ね上がる心臓を上から手で押さえつけ、出久は転校生をクラスメートの輪から少し離れた場所へ連れて行った。
「あ、あのね、こんなのただの余計なお世話かも知れないから流してくれても全然構わないんだけど……」
そう言う出久の話し方は早口で声も小さい。よく考えたら周りのクラスメートも爆豪の性格は知るところだから、もう既に忠告を受けた後なのかも知れない……と、呼び止めた後になってそんなことばかり気になり、無駄に前置きが長くなってしまう。気の小さい出久独特の語り口だ。
「一ノ瀬くんの相手、かっちゃ……爆豪、くん、だよね?」
「え? ああ、うん。そうみたいだ」
そう言われて、転校生は手に持っていたプリントに視線を落とした。
「ばくごう……かつき、って読むのか。かっこいい名前だよな」
「う、うん。て、いや、そうじゃなくて。あのね、こんなこと言うとちょっと、角が立つって言うか、その……なんだけど。爆豪くんってすっごい凶暴……じゃなかった、容赦ないから、気を付けた方が……」
「なァーに吹き込んでくれてンだデクてめェ」
チンピラのようなどすの利いた声が後ろから覆い被さり、出久は反射的に背筋をのばした。嫌な予感を全身に駆けめぐらせたまま、ゆっくりと振り向く。そこには明るい色の髪をツンツン跳ねさせ、ぎらりとした橙色の目でこちらを睨みつける、爆豪勝己その人がいた。
「か、かっちゃん……!」
「どこの誰が凶暴だって? ああ? 言ってみろやゴラ」