【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】
第6章 謎の少年
「いつも通り、このまま交番まで持ってく感じでいいよな?」
「……いいけど、その姿で持って行かないでよ」
「いやいやいや、さすがの俺もそこはわきまえてんよ? この状態でこいつら引きずってったら捕まるの確実に俺じゃん?」
「このまま全裸でいる癖ついたら、あんたきっとそのまま人前に出るようになるよ。きっとっていうか、確実に。絶対に。100%」
「おい! 予言すんのやめろ!」
二人の掛け合いは何とも軽妙で、端から聞いていてもお互い気の置けない関係であることがひしひしと感じられた。それによくよく見ればこの二人、顔立ちがよく似ている。獣を思わせるアーモンド形の瞳なんか、特にそっくりだ。髪と目の色も同じだし、兄妹なのだろうか。
目前の危機が去ったせいだろうか、そうして暢気なことを考えていると、不意に少年の目がきろりとこちらを向いた。ばっちり目があったその瞬間、少年が「うっわ!!」と大声を上げて飛びすさる。その野性的な素早い身のこなしは、狼のそれを彷彿とさせた。
「びっっっくりした!! え!? 何!? 誰!? 不審者!?」
「いや、どう見てもあんたの方が不審者でしょ。真っ裸だし」
出久がここにいることを全く認識していなかったのだろう、ひどく動揺し警戒する少年に対し、少女はいたって冷静だ。ゆったりと腕を組んでさえいる。
「いやいやいやいやそういう問題じゃねーだろ!? え? 誰? 何でいんの? つかその制服、雄英?」
何かに思い当たったらしい少年は、獣のような目をまん丸くして、人差し指で出久をズビシッと指さした。
「ってことは、お前がウワサの秘蔵っ子かよ!? オールマイトの!!」
大声で指摘され、どきりと心臓が喉元まで跳ね上がった。個性を使ってもいないのに、初対面で出久をオールマイトと結びつける人間はまずいない。まして、秘蔵っ子だなんて。
確信した。彼らは出久の秘密を知っている。翔と同じだ。少女が、翼、と少年の名前らしきものを呼ぶ。