【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】
第6章 謎の少年
少年は実に気持ちよさそうな伸びを終えると、おもむろに足下に転がっている鳥男の襟首をひっつかみ、少女のいる方へずるずると引きずっていった。同じく意識のない眼帯男と背中合わせに座らせると、傍にいた少女が再び指でくるくると螺旋を描く。途端、手持ちぶさたに宙に浮いたままだった鉄鞭が彼女の指の動きにあわせて鳥男と眼帯男の身体をぐるぐる巻きにしてしまった。実に手際の良い拘束である。
(個性……物体操作、とか……? オーソドックスだけどなんて強力な……)
指の動き一つで敵をのしてしまうなんて、個性ありきのこの世界でもちょっと信じられる光景ではない。彼女の魔法使いのような手際と佇まいにすっかり魅了され、出久はごくりと生唾を飲み下した。
「うーい、いっちょあがりーっと」
二人の男の拘束が終わり、少年は人心地ついたとばかりにぐるぐると両腕を回して言った。うわ、喋った、と思って少し驚く。というか、未だ彼は当たり前のように全裸のままだが、良いのだろうか。そろそろ下着だけでも着てくれないと目のやり場に困る。
出久がそう思ったところで、今まで何の言及も素振りもしなかった少女がじとりとした目で少年を睨めつけた。
「ちょっと、いつまで全裸でいるつもり? 戻ったらすぐに服着ろっていつも言ってるでしょ」
「服? あー、「家」に忘れちった」
「また? 何回忘れたら気が済むのよ、今日出る前にも言ったのに……ていうか、服ないなら人間に戻らないで。恥ずかしい」
「へいへい、わーってるって。おめーもしつこいよな、桜」
「誰のせいよ」
少年のいかにもめんどくさそうな返事に、はあ、と呆れてため息をつく少女。だが彼女のそのような態度は、当の少年には全く響いていないようだ。