• テキストサイズ

【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】

第6章 謎の少年




 出久の方はと言うと、惚けたように少女を見つめたまま立ち上がることすらできなかった。翔のことも含め、あまりにたくさんのことが起こりすぎて、いよいよ脳が状況把握するのを拒絶しようとしている。


 彼らは誰で、今叩きのめされてのびている男達は誰で、なぜ両者は戦ったのか。疑問はわいてくるのに、思考がついてこない。口が馬鹿みたいに半開きになっているのを遠く意識する。


 そのまま何気なく視線を路地の奥の方に――気絶した鳥男とその上へ跨がる巨狼の方にずらした出久は、すんでのところで出そうになった声をのみこんだ。それはうずくまった姿勢からゆっくりと身を起こそうとしている。その身体の下には仰向けになって気絶した鳥男がいるが、サイズからして明らかにさっきの巨大な狼ではない。


 それは少年だった。180cmくらいの、薄暗い路地裏で発光しているように見えるほど明るい、金の髪の少年。少女のそれとまったく同じ色だ。目は――今気づいた。片方は髪と同じ金だが、片方は灰色のような青色のような、何とも名状しがたい淀んだ色をしている。見えているのか。よく分からない。


 しなやかで動きやすそうな筋肉をまとった肉体はすらりと長く、人間なのにどこか野生の獣を思わせる体つきだ。胸板が厚く、腹も六つに割れているのに、なぜか筋肉の重さを感じさせない。とことんまで実践を重んじて磨き上げられた肉体といった感じだ。


 ……なぜ出久にそのような彼の肉体の詳細が分かるのか。断じて男性の肉体を観察するのが好きというわけじゃない。確かにヒーローの活動を追いかけるのは好きというか、ほとんど趣味みたいなものだけれど、それとこれとは別だ。


 正直あまり声を大にして言いたくはないが――まあ実際に声には出していないが、むしろ声を上げそうになっているのを必死に抑え込んでいるというか。どういうことかと言うとつまりーー少年は全裸だった。外に出るのなら当然身につけるべき衣服はおろか、下着すら着ていない。当然、いわゆる男性の象徴、もっとも大事な部分も丸見えだ。


 しかし少年は出久の視線など露ほども気にしていない様子で立ち上がると、のんびりと伸びをしてあくびまでしてみせた。その態度があまりに堂々としていて、目をそらした方がいいのかあえて気にしない方がいいのかも分からない。

/ 106ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp