【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】
第6章 謎の少年
ドォォォォン!!
「ぐげぇッ!!」
再び狼の、今度はかなり高い角度から猛烈な体当たりを食らい、鳥男の上半身が背後の地面に冗談でなくめり込んだ。轟音が響き、大量の砂埃が舞う。
それが晴れた後には、へこんだ地面に仰向けに倒れ伏し、額やら目尻やら口やらから血を噴きだしている、ぼろぼろの哀れな男の姿があった。手にはおそらく体当たりをされる直前に生成したのだろう、先が鋭く尖った大きな羽ペンのような武器が握られている。
「すごい……」
出久は思わず呟いた。圧倒的な力とはこういうことを言うのだと、まざまざと見せつけられたような心地だった。おそらくはそれなりの手練れであろう敵を前に、怖じ気付くこともなく立ち向かい、鮮やかに叩きのめしてみせる――その姿はどことなく、対人戦闘訓練の際に見た、あの翔の佇まいと似ていた。
早々に戦線離脱させられた鳥男を後目に、遠くに退いていた少女のからかうような笑い声が響く。
「派手な個性だねえ。嫌いじゃないけど」
仲間が為す術なくやられ、眼帯男の顔に明らかな動揺の情が浮かんだ。脂汗を垂らしわなわなと震える男に対して、少女は汗一つかかずいっそ爽やかな微笑さえ浮かべている。
「くそ……くそ……化け物どもがぁあぁあああ!!!」
敵意と殺意を滴るほどに帯びた男の絶叫。しかしそこには今までなかった、底知れぬ力を持つ子供たちへの恐怖の念が感じ取れた。
こいつらは何だ。得体が知れない。逃げられない。殺せない。――いや、殺されてしまう!
驚愕と恐怖に絡め取られたその声は、聞きようによっては悲鳴とも受け取れた。