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【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】

第6章 謎の少年




 ひときわ高い建物の屋上に前足がかかると、狼はさらに勢いをつけて跳び上がり、中空へと身を躍らせた。筋肉に覆われたしなやかな肢体が、白金色の体毛が、沈みかけの太陽の光を受けて星のようにきらきらと輝く。


 狼はそのまま上空で身を捻り、同じく上空へ飛び上がってきた無数の鳥たちと正面から対峙する格好になった。瞬間、出久は背筋をぞくりとさせる。狼の金の瞳が一瞬、燃えるような憎悪と粘ついた愉悦をはらんでぎらりと光ったからだ。


 殺意。圧倒的な。男たちが放ったのとはまた異質の、獰猛な、血に飢える獣が発する生々しい殺意が、暗い路地裏に電撃のように迸る。


 ヴォオオオオオオオオ!!!!


 空気を突き震わすような凄まじい雄叫びを発しながら、狼は右足を高々と振り上げた。真っ赤な夕日にその太く巨大な爪を鈍く光らせ、体にかかる重力のままに襲い来る鳥たちと激突する。生き物の皮膚や肉など簡単に引き裂いてしまいそうな、凶悪な鋭さの嘴を一身に突き出し襲いかかった鳥たちは――しかし、一匹たりとも狼に一矢報いることはできなかった。


 狼の身体をびっしりと覆う、鋼を細くしてよりあわせたような硬質の体毛と、振り下ろされた右足が起こす凄まじい風圧。断崖のような圧倒的な力の差を前に、鳥たちの数の暴力はまったく無力と言うほかなかった。嘴をねじ折られるか方向を見失いてんでに飛ばされるか、もしくは彼の振り下ろした暴悪な爪に八つ裂きにされるなどして、鳥男の羽から生まれた無数の鳥の筵は呆気なく破られた。


 鳥たちの猛襲をその肉体ひとつで退けた巨狼は、手近な建物の壁に斜めに着地、後ろ足で思い切り壁を蹴り、その勢いのまま直線上にいた鳥男に真っ向から襲いかかった。


 ターゲットになった鳥男は指に挟んだ羽を構え、慌てて何事かしようとしたが、遅すぎた。いや、間に合ったとしてもこの猛悪の権化と化した狼に、一矢報いることはできなかったかも知れない。


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