【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】
第6章 謎の少年
『5年前……敵の襲撃で負った傷だ』
『これは世間に公表されていない。公表しないでくれと私が頼んだ』
飛び抜けた戦闘能力。好戦的にぎらつく、赤い瞳。
(まさか、)
恐ろしい考えに行き当たり、出久はすぐさまそれを頭の中から追い払おうとした。けれどその予測は妙に現実味を帯びて生々しく、振り払っても振り払っても煙のように頭の中をくゆり続ける。
「うーん……もしかしたらもしかしてだけど……う~っすら心当たりらしきものならあるかも……」
「そうなんですか!?」
ようやく解決の糸口が掴めたと思って、出久の声は格段に明るくなった。しかし、オールマイトの表情は固く話し方も歯切れが悪い。
「うん……でも、そうだとすると……うーん、これは厄介なことになったな……」
オールマイトはさらに深く首を傾げ、何か考え込んでいるようだ。しばらくして顔を上げ、神妙な面持ちで出久を見据える。
「緑谷少年。少々きつい言い方になってしまうが、はっきり伝えておこう。彼には当分近づかない方がいい」
「えっ」
思わず間抜けな声が出た。それがおよそ、オールマイトから発されたとは思えない言葉だったからだ。
「何の説明もなしにこんなことを言うのは、ずるいと思われても仕方ないと思う。だが、事はかなり複雑に絡まり合っているようだ。相澤くんも何やら、一ノ瀬少年のことで動いているようだし……学校全体で対応すべき事案なのかも知れない」
「相澤先生が……?」
急に予想だにしない名前が出てきて、出久は戸惑った。相澤消太。1-Aの担任教師。彼が翔のことで動くとすれば――一体そこにどんな事情があるというのだろうか。
咄嗟にここ一週間の相澤の様子を思い出してみたが、特に翔だけに特別な態度をとっているような記憶はなかった。それもそうだろう。相澤は教師だ、どんな事情を抱えていようと生徒がそれと気づくような態度をとるはずがない。