【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】
第6章 謎の少年
「ともかく、そうなってくると、一介の教師でしかない私が個人でできることは少ない。君自身にも関わることなのに、何も教えることができなくてすまないね……事情が動き次第、君にも必ず伝えるよ。だからそれまでは、ひとまず一ノ瀬少年とは距離を置いていてくれないか」
オールマイトは心底申し訳なさそうに眉尻を下げると、出久の肩をぽんと叩いた。大きくて肉厚な手のひらの感触。それを境に記憶は途切れ、出久は思考の海からゆっくりと浮上する。
(オールマイトもどうしたら良いか決めあぐねてる……警戒してるんだ。でもこのままじゃ何も分からない。一ノ瀬くんが秘密を知っているわけも、それを僕に話したわけも……)
このまま状況が動くまで、手をこまねいているしかないのだろうか。言い知れぬ焦燥感に苛まれ、出久は唇を真一文字に引き結ぶ。
「緑谷くんは一ノ瀬くんとは話さないのかい?」
「うひぇ!? な、なんで!?」
小首を傾げる飯田に突如質問され、不意をつかれた出久はほとんど真上に飛び上がった。
「いや、緑谷くんは一ノ瀬くんとほとんどしゃべっていないような気がしてな! せっかく席が隣同士なのだから、もっと積極的に話しかければいいのに」
寝込みを襲われたような容赦ない指摘に、出久はこれ以上ないほどに慌てふためいた。額から冷や汗を垂らしつつ何とか言い訳をひねり出す。
「い、いやいやいや、そそそそんな……ほら! 一ノ瀬くん人気者だから! あんまり話しかけすぎるのも、さ、何か、疲れちゃうんじゃないかって。ね、雄英に来たばかりだし、新しい生活に慣れるのも体力いるよなぁ……って思ったり……」
出久の出来合いの言い訳に、飯田はふーむと真剣に考え込みながら腕を組んだ。
「確かに緑谷くんの言うとおりだ。まだ雄英に転校してきて1週間しか経っていないものな。色々と慣れることに苦労を感じているかも知れない……よし、みんな! あまりいっぺんに話しかけて一ノ瀬くんに心労をかけるのはやめるんだ!」