【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】
第5章 懐疑
「セーブ……まさかそんな……」
「そのまさかなんですよねえ。びっくりするのも無理ないですけど。世間じゃ『Save』の存在は都市伝説みたいなところありますしねえ。まァでも、火のない所に煙は立たないってヤツですよ。何事もね」
相澤の疑心をよそに、白銀はゆったりと足を組んだまま何でもないことのように言ってのけた。その余裕綽々とした態度からは、こちらを騙そうとしているような意図は欠片も窺えない。
一対一で差し向かいながらこれほど冷静でいられるのは、相当に図太い神経を持ち合わせているのか、よほど騙しの腕が立つのか――それとも本当に真実を口にしているのか。その飄々とした態度からは予測がつかない。
「まァ実際のところ、世間で言われているほど『Save』の存在は秘匿されているわけでもないですよ。他庁の機関や民間企業に協力をあおぐことも少なくないですしねえ。私みたいな下っ端構成員なんて特に、やってることは公務員とほぼ変わりません。都市伝説的に扱われているのはまァ、単純に仕事上の秘匿義務が資しているところが大きいでしょう。どんな仕事だって同じでしょうがね、業務内容を他に漏らさないっていうのは」
白銀はしみじみといったふうに語り、小さく息をつくと、話が逸れましたねと言って足を組み直した。
「私の身分もそうですが、うちの孤児院……『アザミの家』も特別なものでしてねえ。表向きはごく普通の孤児院ですが、実際は違法研究の犠牲となった子どもの保護を行う特別指定を受けた孤児院なんです」
まるで隠していた宝物を披露して自慢するかのように、終始笑みを含ませながら白銀は話す。
「というのも最近、裏社会で複数の組織がそうした希少な個性を持つ子どもをさらってきては、非人道的な研究をしたり調教したりと好き勝手やってましてねえ。しかしその実状は表社会にはほとんど露呈しない。表向きはきちんと特許を得て、まっとうな個性の研究所をうたっているのでね」