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【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】

第5章 懐疑




 違法研究所。相澤はその言葉を脳内で反芻した。聞き覚えのある言葉だ。最近ではほとんど聞かれなくなったが、十数年前、それこそ相澤が中高生だった頃には頻繁に耳にした言葉だ。


 いぶかしむ相澤に、白銀は白衣の内ポケットから一枚の紙を取り出した。サイズを見るに、名刺のようだ。


「申し遅れました。私、防衛大臣直属のエージェントグループ『Save』所属、「未成年個性事件特別対策室被害児保護課」の5等級役員、白亜凪人でございます」


 ひどく勿体ぶりながら差し出された名刺を受け取り、相澤は視線を走らせる。そこには印刷された黒い文字で目の前の男の身分が事細かく記されていた。



 防衛庁所属団体「Save」
 未成年個性事件特別対策室被害児保護課5等級役員 兼
 都立特別孤児院「アザミの家」院長

 白銀凪人



 相澤は目を疑った。Save。政府子飼いの超法規的エージェント集団。凶悪敵集団へのスパイ活動、政府要人の身辺保護、脱走死刑囚の秘密裏の捕縛等々、危険かつ後ろ暗い任務を一手に請け負う「静かな軍隊」。彼らはけして公に出ることなく、出たとしても『Save』所属であることは生涯に渡り秘匿し続ける。一人残らず希少かつ強力な個性を持ち合わせ、その戦闘能力はプロヒーローに匹敵するほどだというーーというのが、世間の『Save』に対する見解、もっと言えば噂話だ。実際のところ『Save』所属の人間は表舞台に出てくることはないから、どの話も信憑性がなく様々な憶測が好き勝手に飛び回っているのが現状だ。中には、『Save』などという団体は存在しない、小説やドラマなんかでよくある「政府所属の秘密組織」なんていうありきたりな設定あたりが噂の出所だろうと言う者までいる。政府もその存在については一切言及していない、いわば都市伝説のたぐいのものだ。


 その存在するかどうかも定かでない組織の一員であると、この男は言い張っているのだ。とてもではないが信じられず、むしろ信じてもらえると向こうが思っていることも信じられず、思わず声が漏れる。


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