【ヒロアカ】血まみれヒーローと黒の少年【原作沿い男主】
第7章 アザミの家
だから翔がああして声をかけてくれたとき、泣きたいような胸を締め付けられるような、あたたかい気持ちになったのだ。それで何かが解決したわけではないけれど、「話を聞く」と、そう言ってくれただけで自分は救われた。こぼれ落ちそうになっていた大事な何かを、拾い上げてもらえたような気がした。だからこそ、翔が悪者かどうか確かめたいと自分は強く思ったのだ。あの言葉を、声をかけてくれたという事実を、偽りのものにしたくなかったから。誰かにそう決めつけられたくなかったから。
オールマイトが自分をワン・フォー・オールの継承者と認めてくれたように。お茶子が入試での得点をもらえるよう打診してくれたように。自分が救われたから、救われたと思ったから、そのためにただ動きたいと思ったのだ。翔が隠しているものを知って、自分なりに考えて、納得できたら、自分も翔に手を差し伸べたい。彼が自分と同じように秘密を抱えているなら、何かしてあげられることがあるんじゃないかと思ったから。知ってもらえるだけで救われることがあると分かっていたから。
だからこれは多分、ただのお節介だ。翔が出久に声をかけたのも、おそらくは。言うなればこれはお節介の応酬だ。でも引き下がるつもりはない。自分がワン・フォー・オールの継承者になることでできた縁だというなら、これも運命なのかも知れないとすら思う。
「僕は知ってしまったんです。一ノ瀬くんも、僕と同じような秘密を抱えているんだって。だったらそれを見て見ぬ振りはできません。後戻りができるとも、思ってません。救けられるものが手の届く場所にあるなら、僕は全部救けていきたいんです」