• テキストサイズ

歌い手になったきっかけは“貴方”でした

第9章 小説のようなドマラティックな音を








私の全てを見て欲しい。

あ、変な意味じゃなく今までの私が辿ってきた物語を知って欲しかった。

同情してほしいわけじゃない。
ただ、私は貴方たちに救われ、今ここにいること…
貴方はよく「自分なんか」と卑下するところがあるから、私みたいに貴方の音楽で変わることが出来た人がたくさんいると伝えたかったのだ。



まふくんがおすすめと連れて来てくれた食事中、私はずっと話してしまったけど貴方は一言一言しっかり頷いてくれた。
私の問いかけにもちゃんと返してくれて、本当に優しい人だと思った。



私はそして、本当に全て話してしまった。

私の昔の職業も、トラウマも… 私の口から発することはなかった本音も。
これは渉くんにも言えなかった本音。





”死にたいと思った”






この言葉にまふくんは何も言わなかった。
きっと、まふくんにも昔あった感情だったのだろうと私は認識した。





























私は子供の頃から親のコネで声優として活動していた。
といっても親の出演する作品の子供や動物の声を担当するくらいだったんだけど、とあるお偉いさんが私の演技力をかってくれて、子供向けアニメの主人公に推薦してくれた。

それからというもの私への仕事がいくつも舞い込んで来て、両親がとても喜んでくれたことを今でもよく覚えている。
両親が褒めてくれることが凄く嬉しくて、勉強や稽古に夢中だったから。

でも子供の私には、親の七光りという言葉はまだ知らなかった。


高校生にもなれば自分1人で現場に行くことも多くなり、多忙な両親とはすれ違う生活となっていった。
それでも両親が喜んでくれるなら、どこかで私の声を聞いてくれているなら、そう思い続けて学業と仕事の両立を頑張っていた。

このくらいの時かな… 渉くんと同じ作品に携わることになったのは。
といっても渉くんも多忙であまり話すことはなかったけど…

今思えば、この時は既に歌い手との両立に忙しかったのかもしれない。
昔から渉くんは努力家だったなぁ。










/ 27ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp