第1章 死ねないんですか?
「あら、お帰りなさい、今日はちゃんが来てるわよ」
「父さん!お帰りなさい!」
サスケが玄関まで走って行き、イタチと私はテーブルに取り残された
イタチはいそいそと宿題を片付け始める、それをなんとなしに眺めていると、戸が空いてサスケの父親が出てきた
「おかえり父さん」
「お邪魔してます」
「…ああ」
それからサスケのお父さんは風呂に入り、私たちは食事の準備をする
食事時にはサスケとイタチがよく喋り、それに母親が注意を入れつつ父親も時たま茶々を入れるような、まぁ、理想の家庭だった
私も前世はそうだった、今はとてもじゃないが、家族で食事をするときは両親は仕事の話をしているのだ。私が一切言葉を発しないためにそういう事務的な会話になってしまうのだろう
ここでもサスケに話しかけられれば少し反応してそれ以外は最小限のリアクションで済ませている。サスケママは大丈夫かしらこの子…みたいな目で見てくるがまあ現状肩入れしない理由になるからいいっちゃいいのだ
泣いてない、泣いてないから
前世の食事風景は和気藹々としていた、弟が学校の話をして、私が茶々を入れて、突っかかる弟を母親がたしなめて、父はそれを笑ってみてるのだ
少し心がほっこりした、食事が終わると私は食器運びを手伝う、そのあとはイタチ引率で子供たちのお風呂だ
ええ男の人と一緒!?と最初は思ったがそこはショタ、抜群の順応力だった。サスケを中央に置いてイタチと私が端で湯船に浸かる
「兄さん、今日はアカデミーでなにをしたの?」
「今日は演習をしたな」
演習!とサスケが目を輝かせる
「もちろん兄さんが一番だよね?」
イタチが曖昧に笑うとサスケはキラキラと目を輝かせた、やっぱ兄さんはすごい!とか自慢の兄さんだよ!とか褒め称えるとイタチは照れ笑いをする、これも可愛い
そんなふたりを微笑ましく見守るのが私だ、役得すぎる、来る悪夢を今だけは忘れることができそうだ
「もういいだろうサスケ、洗うぞ」
褒め殺しに根負けして照れかのぼせかで顔がほんのり赤いイタチはサスケを湯船から引き上げた、私も思わず頬が緩む、目があったサスケもニコニコしてる、かわいい
サスケが終わると私はひとりで湯船から出る、もうすでにひとりで洗える旨は伝えているので湯船で何か話す兄弟の声に耳を傾けながら私は頭からお湯をかぶった