第1章 死ねないんですか?
「じゃぁ、私おきがえ持ってくる」
「一緒に行こう」
「別にいいよ」
「じゃぁ、俺は散歩に出かけたい気分になった」
私は露骨に嫌そうな顔をするが、イタチは気にもとめずに玄関に向かう、とんでもねえマセガキだな、私は息をついてそのあとを追った
一人で靴も履けるんだ、めっちゃ手のかからない子に違いない、つま先を整えて玄関を出る、家は隣なのでイタチとは一旦そこでお別れのフリ、彼は一応散歩に行くという名目なのでそのまま通り過ぎる演技までしてくれるのだ、よくやるよ
家に上がって下着を用意する、そういえばどれぐらい泊まるんだろうか?とりあえず一週間分の着替えを用意しよう、タオルは向こうで借りるか……石鹸と歯ブラシとあとはパジャマか
子どもが持つにはいくらか大きいバッグに詰め込んで玄関を出るとイタチが軒先に背を預けて待っていた
「散歩は?」
「十分に歩いたから休憩をしていたんだ」
よく言う
「持つか?」
顔に出てたのだろうか、苦笑された
「いい」
ショルダーをかけ直して彼の家まで戻る、サスケがようやく起きたようで、ぼーっとした顔で私が積んだ積み木を眺めていた
「サスケ、起きたのか?」
イタチが声をかけると、サスケは眠そうな顔でこちらを見たあとぱっと笑顔を咲かせた
かわいい
「兄さん!今帰ってきたの?」
慌てて立ち上がり玄関まで来る
それにイタチは頬を緩ませながらいや、と置いた
「が泊まりになるからな、荷物を取りに行ってたんだ」
「が?」
それから横に居る私を見たサスケはまたまたぱっと顔を明るくさせた。喜んだサスケが母親の呼び声に引っ張られ姿を消したあたりで私は靴を脱ぐ
「散歩じゃなかったの?」
「あー、言葉のあやだ」
そう、と返して私はそのまま積み木を片付けに行った
幼子にして皮肉を言うとかどこからどう見ても気難しく気味の悪い子供だろう
積み木だけじゃない、サスケはごっこ遊びも好きなのだ、その片付けをしなきゃならん、途中からサスケも片付けを手伝ってくれたが途中で飽きてイタチの宿題を見に行った、なんてやろうだ……まぁ、彼が手伝うとおもちゃ箱は大惨事だ、ぐちゃぐちゃになってしょうがないので一人で片付けたほうが楽ってのは認めよう